・精神障害をもつ高齢者に対するケアや治療へのアクセスが十分でない。
・高齢者の栄養状態が十分注目されてこなかった。
・高齢者ケアが要求する新しい、しかも複雑な職務に対して、職員の専門的対応が十分ではない。職員の能力のレベルアップの不十分さは、コミューンのさまざまなレベルにおいて指導的立場にある責任者にも共通する問題である。
さらに、「高齢者に対する対応・接し方」に関して専門調査委員会が95年に国会の下に設置された。委員会の報告書(SOU 1997:51;SOU 1997:52;SOU 1997:96;SOU 1997:147;SOU 1997:170)によると、個人の人格や自己決定権を尊重し、安心して質のよいケアやサービスが受けられるという観点からみると、さまざまな分野での対応の不十分さ(過剰あるいは不十分な薬の処方、時間不足による不十分な介護対応、虐待的行為など)が報告されている。
反面、サービスやケアの質を高めるためのよい実践(異なる現場の職員のネットワークづくり、ストローク患者に対するリハビリテーション・ネットワーク、痴呆性高齢者の家族支援プロジェクトなど)が、さまざまな現場から報告されている。
(4) 高齢者政策の国政目標と基本的方針
すべての社会部門に共通する高齢者政策目標として、政府が打ち出したのは高齢者をとりまく以下の条件である。これらの政策目標は、定期的に政府によってフォローされるものである。
・高齢者が積極的な人生を生き、社会および自らの日常生活の形成に影響を及ぼすこと。
・安心と他人に依存することなく老いることができること。
・尊敬をもって接せられること。
・よいケアと介護(保健・医療、福祉サービスともに)にアクセスできること。
政府がわざわざ国政目標を打ち立てた背景は、まず高齢者事業が分権化されていることにある。高齢者事業は、地方自治体であるコミューンおよび県コミューンによって実施され、さらにその他の運営委託先も含めると、その施行者は多数に及ぶ。したがって、共通の目標と基本的方針にもとづいて事業が進められること、また資源の共同利用によって事業の効率化をはかること、高齢者のニーズに対して総合的に対応することなどが必要不可欠になってきたといえる。国の高齢者事業の目標は、91年の第46回国連総会で採択された原則、自立、参加、ケア、自己実現、尊厳に基本をおくものである。
これらの目標を達成するためには、連帯的原則による運営(賦課方式/社会扶助方式)が基本的な前提になるとしている。すべての人が、個人的な経済条件や社会的背景、性別あるいは年齢によって左右されるのではなく、あくまでも一人一人のニーズ