ミューンにおける高齢者・障害者福祉予算(約20%)は、90年代変化していないことからみても、財政困難にもかかわらず高齢者福祉は優先されてきた分野であるといえる。それに対して、コミューンが予算を縮小した分野は、保育および義務教育分野であった。
職員資源:
96年の統計によると、コミューンの高齢者・障害者事業に従事する職員数は26万人を超える。92%が女性であり、パートタイム就業が相対的に多い。この分野で働く職員総数は90年代増加しているが、その主な理由はエーデル改革により県コミューンの保健・医療職員がコミューンに移行したことによる。
スウェーデンは長い間深刻な職員不足を経験することなくやってきたが、数年後には80年代後半と同様な職員不足を迎えることが予測される。1995〜2005年の間に、コミューンは約2万人の職員(フルタイム就業)増加を必要とすることが予測される。新採用のニーズは、年間1万4000人(合計17万6000人)である。県コミューンの保健・医療職員に関しても、2000年以降看護婦・准看護婦の不足が予測される。
(3) エーデル改革以後の問題点
エーデル改革の評価後も、政府は社会庁に対して高齢者ケアの現状を引き続きフォローするように命じている。焦点がおかれたのは、末期におけるケアの質(安心感や安全)と在宅ケア(医療、福祉ともに)における対応(人道的、効率的側面)であった。さらに、高齢者ケアの優先問題に関わって、介護ニーズの高い高齢者が充実し、しかも自立した生活をおくる可能性も、重要視している。97年に社会庁は最初の報告書を政府に提出したが、それによると次のような問題点が指摘されている。
・以前に比べて、在宅高齢者のケアニーズが高くなったことや単身世帯が増加したことにより、量・質ともにより高いホームヘルプ・サービスが要求されるが、ホームヘルプ・サービスがこれらの要求に十分に応じていない。
・末期において安心感および安全の伴う質のよいケアを提供するとい点では、在宅ケアばかりでなく特別な住まいにおいても、十分な資源、能力、目的にかなった組織の欠落が指摘される。
・高齢者に援助ニーズがあるにもかかわらず、サービス料金が値上がりしたためにサ―ビスを申請しない、あるいは受けてきたサービスを断る傾向が指摘される。たとえ、わずかなホームヘルプサービスであっても、問題の発生を予防しまた情緒的な援助を与えるという点でホームヘルプサービスの役割は大きい。したがって、ニーズではなく経済的要因によって、サービスを回避しなければならない傾向は好ましくない。