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90年代前半の財政的な困難のために資源調達が限られてきたなかで、資源利用の面で効果があがったことは重視されるべきことといいえる。サービスやケアを受ける側の高齢者からみても、社会的入院の減少と「特別な住まい」の拡充によって、年間約5,000人が病院から自宅あるいは自宅同様の生活環境に戻っている(Alaby、1997)。

91年の統計では、長期療養病棟や老人ホームでは22%が相部屋で生活していたが、94年にはその割合は14%にまで減少している。また、94年には合計約1万4,000の居室で構成される1,600のが存在したが、その半数以上が92年から94年までの間に建設されたものであった。このことをみても、改革がグループ住宅の拡充に力を注いだことがわかる。

 

地域の保健・医療サービスに与えた影響:

地域における保健・医療と社会福祉サービスの統合により、高齢者ケアの継続性がさらに強化された。行政の窓口の一本化によって、職員の対応や情報提供が改善されたことも、サービスの質の向上を促した。

また、高齢者に対する医療専門職(看護婦、准看護婦、作業療法士や理学療法士などのリハビリテーション専門職員)の配置を強化したことにより、生活の身近な場において専門的な医療サービスを受けることが、これまでよりずっと容易になった。さらに、ナーシングホーム所属の医療専門職員が、地域の「特別な住まい」に居住する人々のニーズにも対応することができるようになったことは、それらの「住まい」における医療サービスの質をいっそう向上させることになった。

エーデル改革によって、医師を除く約5万5,000人の医療関係職員の身分が、県コミューンからコミューンに移管された。このことは、コミューンの高齢者ケアにおける医学的専門知識(医薬品に関する知識、看護記録、ケア計画、品質管理、緩和治療、失禁症のケア、その他)の向上に大きく寄与し、コミューンの高齢者ケア自体のレベルアップをもたらしたといえる。また、これまで病院に依存しなければ不可能であった医療と福祉のニーズの高い高齢者の在宅ケアが可能になったことである。ホームヘルプサービスの内容も単なる家事援助から介護・看護中心の専門的業務に移行することができるようになったといえる。

 

残された課題:

改革の不十分な点もいくつか指摘される。

(1) 「特別な住まい」への転換をはかったナーシングホームの改造がいまひとつ遅れ気味であり、相部屋が完全に解消されるにいたっていないこと。

(2) 病院医療、プハイマリーケア、「特別な住まい」における保健・医療サービスと社会福祉サービスの連携が十分でないために、高齢者に対するケアの質と継続性に問題が残されていること。

 

 

 

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