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かかわらず、自らの住み慣れた環境において生活を営む可能性をできるかぎり長く保障されることを意味する。ケアやサービスは、自宅での生活を可能にする形で供給されるべきである」(SOU 1975:39・p.55)在宅医療がケア形態の中心に据えられ、プライマリケアの一環として統合された位置付けが行なわれていった(Socialstyrelsen、1973)。家族が希望すれば家族を介護労働者として、地方自治体が雇用する条件が明確にされていったのもこの時期であった。

70年代にはまた、健康高齢者を対象にサービスハウスやデイセンターが建設されていった。身体的な病気をもった高齢者のケアの場としては、大きな長期療養病院が集中的に充てられていった。同時に地域保健・医療センターと関連させてプライマリケア地区に地域ナーシングホームを設置する構想が出されていった。当時痴呆症高齢者のほとんどは、精神病院の30〜50床という大病棟でケアを受けるか、痴呆が主要診断名でない患者は、一般の長期療養病棟でケアを受ける状態におかれていた。

1976年には、社会庁によって出された政策は長期療養の原則を明らかにし、総合的視点からの患者のニーズ把握、職員の定員増加、リハビリテーションと活性化などを強調したものであった。76〜77年には、精神病院から一般の長期療養病棟への痴呆症高齢者ケア移行が明確にされ、精神病院はその規模を大幅に縮小していった。総体的にみると、70年代は施設、それも比較的大きな施設によるケアが展開されていったといえる。ケア思想の面からみると、クライエント(受給者)の権利を中心に据えた社会福祉事業の民主化と、個人の責任よりも、社会の責任が、社会問題の解決にあたって強く問われていった時期であった。これらの努力が蓄積されて、80年代の社会サービス法の誕生を準備していったといえよう。

 

5. 80年代

 

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