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3. 60年代

 

国民付加年金の導入とともに始まった60年代は、福祉国家が、その基礎を固め本格的に発展していった時期の前半にあたる。全体的な発展の下で、保健・医療制度も、福祉国家の重要な部分として、急速に拡張されていった。この頃から既に、人口構造は高齢化を示し始め、したがって医療ケアもその必要性を高めていった。

1950年代に出された、高齢者ケアの基本方向をさらに発展させた形で、1964年に高齢者ケアの拡張プログラム(1964〜85)が当時の社会民主党政府によって出された。ナーシングホームの建設に関しては、充分な医療資源を備えながら、施設としての環境ではなく、家庭により近い住まいとしての環境づくりの重要性を主張している。ナ―シングホームや高齢者のための住宅建設や、ホームヘルプ・サービスの拡張に対して、国の助成金による地方自治体援助の強化もその一つであった。1964年の高齢者ケア政策の効果は、着実で速いものであったといえる。たとえば、1960年にホームヘルプ・サービスを受けた高齢者は55,000人であったが、1976年には341,000人に増加している(Spri、1978)。

1960年代にはまた、いくつかの改良政策を経て、障害者に対する補助器具サービスの制度が確立されていった。1968年には、国とリハビリテーション中央委員会を主体として、補助器具の研究開発、製品テスト、インフォメーションならびに研修活動、補助器具カタログ作成の任務を与えられた障害研究所(Handikappinstitutet)が設立された。同時に、補助器具センターも各県にひとつずつ設立され、そこに作業療法士が雇用され、仕事を開始している。また、機能障害者のための送迎サービスも、この頃から徐々に発展させられていったように、障害を持った人も不自由なく安心して暮らせる社会づくり、物的環境の整備に力の入れられた時期でもあった。

1962年の保健・医療サービス法(1982年改正)、1966年の精神医療法、1968年の知的障害者特別ケア法などの施行がつぎつぎに行なわれ、また、1962年にはすべての国民を対象とする義務制の国民保険法が制定され、翌年から実施に至っている。このようにして医療の行政責任の体系化ならびに組織の整備がなされた時期でもあった。総合的な保健・医療行政の計画や合理化の要求が強まって、1968年に医療福祉計画・合理化研究所(Spri)が国と県コミューン自治体連盟によって設立された。

 

4. 70年代

 

ヨーロッパ全体の傾向として1970年代の始めに強調されたことは、ひとびとが施設に入る時点をなるべく引き伸ばす努力であった。1975年、施設で生活する高齢者は高齢者全人口の1.5%を占めた。施設資源の拡張も行なわれたが、高齢者ケアのノーマライゼーションの原則が打ち立てられたのも70年代半ばであった。

「この原則(ノーマライゼーション)は、すべての人が、ケアやサービスニーズに

 

 

 

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