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(4)老人福祉に関するコンピュータ活用

ア) システムの概要
 このような背景のもとストックホルム市においても高齢化社会が顕著となっており、特にホームヘルパーを必要する人も増えつつある。現在、65歳以上の老人が126,000人いる中で、7月にホームヘルパーを受けた人は15,400人(65歳以上の老人の12.2%)となっている。
 その中で市としては1987年から88年にかけてホームヘルパー、<特別な住居>を必要とする人等を対象としたシステムを稼働させている。このシステムはパラブリ(傘)システムと呼ばれており、傘のように包括的に包んでいこうということからついたシステム名である。システムは、24区個別なものではなく、24区で一律に導入されたシステムであり、市の行政専門局が運営を行い、市の老人福祉を統括している財政部門の福祉統括事務所が担当している。
 このシステムはホームヘルパーがヘルプをした人のデータを端末に入れ、統括的に福祉関係の個人データを一元管理しているシステムであり、個人のデータの他に<特別な住居>の登録までも行っている。例えばデータ登録してある人がどのような状態であるか、統計資料の作成も可能であるし、<特別な住居>の斡旋もこのシステムで行うことができ、その人がく特別な住居>の対象となるかどうかの審査も行え、さらに利用料の請求も行うことができる。
 このシステムは個人の収入、住民基本情報、家賃、年金等様々な条件が入力されていることにより、ホームヘルプ負担金、<特別な住居>の利用料等を簡単に算出することができるシステムである。ちなみに老人ホームにはいる人は年金額等により多少変わるが、個人負担は全体額の2〜3%で、あとの97〜98%は税金で賄われている。
 このシステムはIBMの汎用機を使っており、COBOLで開発されたシステムである。ホームヘルパーが個人データを随時入れてリアルタイムでの更新がなされており、常に最新の状態になっている。

イ) 個人情報保護とセキュリティ対策
 個人情報保護については細心の注意を払うことを前提としており、コンピュータ法及び秘密法を制定して規程している。またヘルパーは担当する地区・人等の制限があり、データの入力はその地区の担当の人のデータしかさわることができない状況であり、また他の個人データは参照できないようになっている。
 セキュリティ対策としては、毎日データのバックアップを行っており、そのテープは別室に保管し、防火、外部侵入の予防措置も万全である。通信回線についても地下の専用線を利用している。また、このシステムのもう一つ大きなバックアップ体制としては南スウェーデンにあるWMコンピュータという民間会社と委託契約しており、そちらにバックアップ用の汎用コンピュータがある。今までハッカーやウィルス等に侵入され、被害がでたことはない。

 

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