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2. サービス提供事業者とのネットワーキングの在り方
 第3章で述べてきた「在宅介護サービス提供支援システム」は、保険者である市町村以外の公民の多くの関係者が参加するネットワークが前提となる。いわば社会的ネットワークの中で相互にメリットを享受しつつ、その役割を果たすことがこのシステムを有効に機能させる上で重要な要素となる。すなわち、これまでの行政中心の与える福祉から変化する中で、お互いがネットワークの一員として存在する意義が見出せる仕組みとすることが必要になるといえる。

 ここでは、地方公共団体としてはどんな点に留意すべきであるか、そのポイントについて以下に整理する。

(1)民間企業の参入
 想定している社会システムにおいては福祉サービスの提供機関として従来の社会福祉法人等に加えて、医療法人や多くの民間企業が参入してくることが想定され、また、そうであることが望ましい姿ともいえる。しかしながら、これは従来の仕組みからの大きな変化であり、様々な課題も発生することが想定される。
 これは一面望ましいと同時に、一方で難しい問題もはらむ変化である。すなわち、民間企業は自らの利益獲得を行動原理とするため、経営情報特に営業上の最重要情報である顧客情報については開示を拒む可能性が高い。結果的に顧客の「囲い込み」が起こり、利用者の選択範囲を狭めることにつながる危険性を持っているといえる。
 地方公共団体としては、サービス受給者が客観的情報に基づき提供者を選び、サービス提供者は受給者についての十分な情報を持ちつつ的確なサービスを提供することを実現するためには、システム構築にあたって、サービス提供事業者が積極的に情報公開を行うように誘導する仕組みを検討する必要が出てくる。サービス提供事業者の全面開示を引き出せない場合には、彼らのサービス提供の実態を何らかの方法で把握できるような仕組みを考えておく必要が出てくる。
 考えられる方向としては、彼らと共通の基盤で協議する場を設けることと、必要最低限の顧客情報がネットワーク上で公開されるよう働きかけることである。それには、地方公共団体の個人情報の開示の在り方が大きなポイントとなろう。

 

 

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