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1-4 介護保険制度の施行が在宅福祉に及ぼす影響

介護保険制度の施行と同時に、以下の影響が考えられる。
(1)市町村独自の福祉サービスと介護保険制度のケアプランの把握
 介護保険制度の施行により、市町村は、従来の措置制度によるサービスに替わる福祉サービスを独自に提供する必要性について検討している。これは、従来、同サービスを受けていた住民が介護認定されなかった場合や介護保険制度のサービス内容が従来のサービス水準より低い場合などに、市町村が独自に福祉サービスを提供するもである。
 この場合、市町村の福祉サービスのケアプランは、地方公共団体の職員か、地方公共団体が業務委託した在宅介護支援センター等が作成することになる。また、介護保険制度の介護サービスは、要介護認定者が選定した居宅介護支援事業者のケアマネジャーや要介護認定者自らが作成する。
 このことは、1人の要介護認定者に対して、介護保険制度に基づくサービスと市町村の福祉サービスが提供され、複数のケアマネジャーが担当するケースが想定される、ということである。

このようなことから、以下の問題が発生すると思われる。
?@スケジュール調整が煩雑化する。
 地方公共団体側で、介護保険制度でのケアプランの情報を把握することができない場合、市町村独自の福祉サービスの提供スケジュールと介護サービスのスケジュールの調整、スケジュールの変更に伴う再調整等の作業が発生する。
?Aサービス利用者に適切なケアが提供できない可能性がある。
 市町村独自の福祉サービスと介護保険制度での介護サービスのケアプランを作成するケアマネジャーが、異なる可能性があることから、サービス利用者の状態に適したケアをヘルパー等と連携しながら提供することが難しくなる。
 本来は、サービス利用者一人にケアマネジャー一人が担当し、ケアプランや具体的なサービス実施計画、サービス提供実績等の全体を総合的に把握し、要介護者のケアを行うことが最良である。
?B訪問指導を行う場合のスケジュールが立てられない可能性がある。
 訪問指導を行う保健婦は、従来、措置制度によるサービスの実施計画を作成している在宅介護支援センター等から、事前に訪問先の状況を把握し、訪問指導の予定を立てていた。
 しかし、介護保険制度でのケアプランやサービス実施計画は、必ずしも従来の在宅介護支援センターが行うわけではないため、訪問先ごとに異なる可能性があるケアマネジャーから、ケアプランや具体的なサービス実施計画を入手する必要があるなど、新たな負荷が発生する。

 そのため、市町村独自の福祉サービスにかかわるケアプランを作成する担当者(担当部門)や福祉保健センター等に所属する保健婦が、介護サービスのケアプランを何らかの方法で入手する必要が発生する。

 介護保険制度でのケアプランを入手する手段として、次の2つが想定される。
・ケアマネジャーから直接入手する。しかし、ケアマネジャーは地方公共団体への報告義務がない(地方公共団体は強要できない。)ため、ケアマネジャー側が協力することにより享受するメリットを明確にする必要がある。
・要介護者から入手する。

 なお、国民健康保険団体連合会(以下、「国保連」と略す。)からは、地方公共団体側へ提供される情報として給付管理表があるが、具体的なケアのスケジュールは含まれていない。(1ヵ月のサービス単位での利用予定点数のみ。)

 

 

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