2.在宅福祉を支える情報の在り方
(1)プライバシー保護と個人情報管理在宅福祉・在宅介護が重要な柱となるこれからの地域福祉行政にあっては、地域住民のプライバシーにかかわる情報がこれまで以上に詳細に地方公共団体に集まることは確実である。世帯・家族・個人の経済・社会的状況だけでなく、介護・介助・看護サービスの実施に伴って要介護者・障害者・病者などとその家族の日々の生活状況や住い方、あるいは時として精神的・心理的状況までも記録する必要が生じる。すでに、救急救命や災害対策などとも関連して、地図情報システムに要介護者のいる住宅構造やその居室の位置などが示されるようなシステムの計画・開発や運用が行われている地方公共団体もある。高齢者とか健診受診者など一部特定住民、あるいは人口の少ない町村においては全住民の健康記録や相談歴、医療機関の受診歴などがデータベース化されている地方公共団体の例もある。
一方で、介護保険制度の施行とともに民間サービス事業者が在宅福祉に多数参入してくる。地方公共団体が介護計画立案者かつ保険者としての立場だけでこれに関与する場合はむしろ稀で、少なくとも何らかの形で要介護認定機関またはその機能を有する組織に関与することであろう。そして人口規模の小さいあるいは何らかの事情のある市町村では民間事業者の参入が見込めず、地方公共団体自らが事業者となったり、第三セクター方式などで民間委託するなどの場合もある。すなわち、公民の事業者が福祉対象者・受給者について同じ質量の情報を必要とするようになったり、あるいはそれぞれが独自に収集・管理するようになる状況が発生する。当然、民間事業者間であれば情報の囲い込みや商品化が生まれるであろう。また事業者が半公半民であったり地方公共団体の委託者であったりすると、情報の授受が緊密に行われる状況も想定される。
この点を各地方公共団体はどう処理するか、整理する必要があろう。基本的にプライバシー保護には細心の注意が払われるべきであるが、それをどのように具体化するかは各地方公共団体固有の事情に依存するので、それ以上の内容をここで一般論として述べることはできない。「踏み絵?C、?D」の視点を意識して対処すべきであることは確かである。本調査委員会の席上、某委員より「個人情報の活用というようなことをよく言うが、福祉関係者は当該本人のためだからいいのではないかと、プライバシー保護の問題をわりと簡単に考えているように見受けられる」という主旨の発言があった。重い発言である。
公民がある意味で入り乱れてスタートする福祉・医療サービスの供給体制は、サービスの「重複」と「取りこぼし」を生じやすい。これを回避するには関係機関・団体・事業者らの緊密な連絡体制・情報交換が必要なのも事実である。プライバシー保護と個人情報管理の問題との関連をどう整理するか、第三者機関の設置やオンブズマン方式による監視など、住民参加に向けた地域住民との対話が在宅福祉行政展開のためには不可欠である。
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