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第3節 地域福祉行政支援情報システムの在り方
 各地方公共団体の情報・システム部門の現状ないし実態をみてみると、介護保険制度をめぐる事務処理システムの開発やこれと連動した在宅福祉サービスをにらんだシステム開発計画の見直し、再構築に忙殺されているようである。制度の運用方法自体が現時点で未だ明確でなく、今後のスケジュールを考えるとごく短時間でシステム開発・試験を進めなければならない状況は誠に厳しいといわざるを得ない。
 しかし、日本の社会保障の考え方と枠組みの転換期ともいえる現在こそ、地方公共団体の福祉行政とこれを支援する情報システムの在り方を、将来を見据えて再検討しなければならないであろう。その時に重要なことは奇をてらうような新たな原則や考え方を持出すことよりも、分かり切っているはずの地域福祉の基本を今一度、福祉部門と情報システム部門とで相互に確認する作業から始めるべきである。
 本節ではこのような視点から、在宅福祉を中心とした次代の地域福祉行政を支える情報システムの在り方について記述する。

1.5つの「踏み絵」
 地方自治情報センターではこれまでに地方公共団体の福祉行政情報化を「福祉総合情報システム」という観点から調査研究を行ってきた。本報告書も基本的にこの流れを受け、そこに昨今の福祉行政を取り巻く社会状況及び中央政府の動向の大きな変化に即応した問題点の指摘や対応策を検討しているものである。
 そこで、これまでに各団体において進められてきた福祉情報化あるいは福祉情報の総合化について点検を行う必要がある。同時に今後の在宅福祉と介護サービスを支援する地域福祉情報システムの在り方を検討する明快な判断基準を提示したい。
 呼び名はいろいろあろうが、いわゆる各団体の「地域福祉行政支援情報システム」においては、以下の5つのポイントをどの程度クリアされているであろうか。また、今後のシステムはこれらの視点からどの程度の効果が予見予測されているであろうか。

?@システムは福祉二一ズヘの即日対応に貢献しているか?
 在宅介護サービスが今後の地域福祉の重要なプログラムとなることを今一度確認したい。食事・入浴といった基本的日常生活事象や安否確認・精神的ケア・救急対応などの常時・緊急の支援体制などのきめ細かな対応が区域の各地で必要となる。「即日対応」、「即刻対応」はシステムの有無にかかわらず地域福祉行政のポイントとして大切であるが、システムはこれに重要な役割を果たしているか。すなわち、システムが稼働していることによりこれが大きく促進されているかということである。

 

 

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