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1-2 在宅福祉サービスの位置づけ
 我が国における「在宅福祉」は、1970年代後半から主張されるようになった社会福祉の新しい動きである。それは可能なかぎり居宅において処遇する社会福祉の体系を意味している。ノーマライゼーション、コミュニティ・ケアといった社会福祉の考え方や方法の定義と、これまで主流であった施設処遇中心の社会福祉への反省、そして高齢化社会の進展に伴うニーズの多様化・高度化(自己実現、ライフスタイルの尊重が「在宅」の理念)などを背景として、在宅福祉は福祉施設との連携のもとに社会福祉の基調とされるようになった。
 本来、高齢者の多くは、身体が不自由になっても住み慣れた地域社会で住み続けることを望んでおり、このような高齢者の在宅生活の維持向上を支援するいわゆる在宅ケアのサービスに対する期待と関心が高まっている。
 そもそも、在宅福祉サービスは、「在宅における自立した生活を維持していく上で必要とされる社会的に提供されるサービスの総称。」であり、本人の健康状態や家族関係など個々人のニーズに応じて提供される対人福祉サービスであるといえる。つまり、サービスの実態が施設などの「ハードウエア」からホームヘルパーなどの「マンパワー(ソフトウエア)」へと変化することを意味する。

 サービスの種類は、日常生活を総合的に援助するものであるため、食事や入浴、掃除、買い物、外出介助など多岐にわたっているが、最近では重い障害をもつ在宅生活者が増加していることから、介護サービスや訪問看護、訪問リハビリテーションなどが重視されてきている。
 また、一般的に在宅ケアを支えるサービスとしては、健康教育や早期検診等の保健サービスから医療・看護サービス、介護サービス、レクリエーションや社会参加活動など様々なレベルが存在しており、このうち狭義の定義として、
?@在宅における医師の診断・治療、訪問看護、保健婦による訪問指導等の専門的な医療・保健サービス
?Aソーシャルワーカー(最近、ケアマネジャーと同義語で呼ばれている)による相談、ホームヘルパーによる身体介護・家事援助、ショートステイ、デイーサービス、日常生活用具給付事業等の福祉サービス
が挙げられる。
 在宅福祉にかかわるサービスメニューは、それぞれの市町村によって異なるが、おおむね、図1-1「在宅福祉にかかわる主なサービスメニュー」に示すとおりである。
 介護保険制度は、このうち居宅サービスなど狭義の範囲を保険給付対象のサービスメニューとして訪問介護や訪問看護、訪問リハビリテーションサービス等を制度的に提供していくものである。

図1-1 在宅福祉にかかわる主なサービスメニュー

 なお、本来、在宅福祉サービスは、在宅ケアと言う観点からすると保健サービスや医療サービスとこれまで以上に強く連携したサービスが求められるものである。このことは、介護保険制度の施行をきっかけに従来の在宅福祉が、医療サービスや保健サービスまで含めた範囲で協調しながらサービスを提供する形へとこれまで以上に変化することを意味している。このような範囲でのサービスをここでは在宅介護サービスとして整理する。

図1-2 在宅介護サービスの範囲

 

 

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