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(1) 組織的な目標実現のためにアウトソーシング実施の決定

 海外の地方公共団体においては行政改革の一環として情報システムのアウトソーシングに取り組む事例が多い。海外の地方公共団体では情報システムのアウトソーシングに伴い情報システム部門の職員がベンダーに転籍する事例も珍しくなく、豪州の南オーストラリア州で195人、英国コベントリー市で127人の情報システム部門職員が転籍している。我が国の地方公共団体において職員の転籍は困難であろうが、組織の改編・スリム化や人的資源の再配置等の大きな目的のもとアウトソーシングの検討を行うことが望まれる。また、情報化が行政改革のツールの一つであることを考えると、業務の効率化等のために新たに情報システムを導入するに際しては、その情報システムを内部で処理するか、それともアウトソーシングするのか常に検討する必要がある。これは前述したような地方公共団体における「コア・コンビタンス」に関する議論と重複するところでもあり、効果、問題点、組織における重要性等を踏まえて十分に検討することが望ましい。
 このほか、近年、地方公共団体の行政サービスにおいて広域的な連携が進められており、適正規模を考慮したサービス効率化に寄与している。このような広域的な連携の一環として、複数の地方公共団体共同で情報システムのアウトソーシングを実施することも想定される。

(2) 運用管理効率化方策としてアウトソーシング実施の決定

 第1章で整理したが、情報システムの運用管理の効率化方策には様々なものがあり、アウトソーシングもその一つである。すべての効率化方策を実践することは困難であり、地方公共団体では、情報システムの評価を踏まえ最適な効率化方策を選択する必要がある。大規模なアウトソーシングに関しては、適切に実施すれば大きな効果が期待できる反面、実施にある程度の期間が必要であり(小規模なアウトソーシングに関しては短期的な活用も可能)、また、ベンダーの選定・契約やシステムの移行等に大きな労力を要する。また、一度アウトソーシングすると再びインソーシングすることも非常に困難な場合もある。このようなアウトソーシングの特性を考慮し、比較的短期的に対応が可能な、情報システムの見直し等のほかの効率化方策と比較検討を行うことが望ましい。
 人材派遣の活用等もアウトソーシングと並列した選択肢として挙げられる。

 

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