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(2) 調査手法全体の評価

 本調査では、地方公共団体が導入しているすべての情報システムではなく、一つのネットワーク・システムのみを対象として調査を行ったが、各地方公共団体において様々な情報システムが導入され、その導入状況にもばらつきがあることを考慮すると適当であったと考える。また、これらの情報システムの中には原課が独自に導入しているものも少なくなく、コストの把握も困難である。
 また、経済性の評価項目に関しては、あまりに細分化しても抽出が困難であり、効果も小さいと考えられる。本調査で提示した評価項目に関しては更なる改善が必要であるものの、細分化の程度としては適当であろう。
 なお、調査対象はすべてパソコンをサーバとするCSSになっているが、汎用機等をホストとするネットワーク・システムにおいても有効であると考える。

(3) ヒアリング調査の評価

 ヒアリング調査では、情報システムの構築費や委託費等、既に金額的に確定している情報の抽出は容易であったが、情報システム部門における人件費の内訳等の把握は比較的困難であった。本調査で対象とした地方公共団体は、情報システム部門の人員も少なく平均的な状況把握が可能であったが、大規模な地方公共団体等においては複数の職員へのヒアリングが必要であると考えられる。
 また、情報システムによるコスト削減効果に関しても抽出を試みたが、ほとんど抽出することができなかった。これは、コピー代、印刷費等のコストに関する情報を把握している部門が財務会計部門や総務部門であるためであり、また、実際にはこのような情報を把握していないことも理由として考えられる。したがって、今後調査を行う場合は財務会計部門や総務部門等へのヒアリング調査も不可欠であり、また、抽出可能な情報について十分な検討が必要であろう。

(4) アンケート調査の評価

 アンケート調査では、FUTZファクタを業務時間内に限定しなかったことから、休み時間等も抽出した時間に含まれていると予想され、今後調査を行う場合は「業務時間内に限定する」等の条件を明示する必要がある。また、アンケート調査からユーザー部門での研修が行われている事例が少なくないことがうかがえ、今後調査を行う場合はユーザー部門の研修費用を把握することも必要である。
 このほか、アンケート調査においては情報システムに関する「問題」と「トラブル」の区別が暖味な部分や、コンピュータが職場のコンピュータを指しているのか個人所有のコンピュータを含むのか判断できない質問もあり、今後調査を行う場合はこれらに留意して質問項目の記述や構成を検討することが望まれる。
 なお、アンケート作成時においては、情報システムを利用しないユーザーを想定していたが、今回の調査ではアンケート調査票がすべて情報システムを利用している人の回答であったため、この部分を抽出できなかった。地方公共団体において将来的にすべての職員に端末を配布することが望まれるのであれば、このような利用していない職員も踏まえた調査の実施が不可欠であり、今後、このような情報の抽出方法を検討する必要がある。

 

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