第4節 情報システムの評価の活用
本調査で検討を試みた経済性評価の有効性を評価するとともに、実際に地方公共団体において経済性評価を行う場合の手順等を示す。また、経済性評価を踏まえ、今後、地方公共団体における情報システム評価の方向性を提案する。
4−1 経済性評価の有効性
本調査で実施した経済性評価方法に関する評価を以下に示す。
(1) 評価方法の有効性
単独評価と比較評価を行ったが、単独評価に関しては、TCO的な発想からユーザー部門も含めて情報システムの運用管理に要しているコストの概算を把握することや、算出した金額を基に節減目標の設定等が可能である。しかし、コストの内訳等を把握することは可能であるものの、それぞれのコストが妥当であるかどうかを金額からのみ評価することは困難である。このようなことから、単独評価だけではコストの概算把握のみで大きな有効性は期待できない。地方公共団体においては、単独で経済性評価に取り組む場合においても、評価だけで完結することなく、評価を基に目標設定を行い、目標を基に次回の評価を行うことで、団体内において時系列的な比較評価に結びつけることが必要であり、最終的には図2-5に示した評価サイクルを構築することが望ましい。
比較評価に関しては、条件の類似するほかの地方公共団体の情報システムと比較することで、どの部分において効率化や改善の余地があるか評価することが可能である。実際、三つの地方公共団体を対象に行った調査では、団体Cのコストが相対的に大きかったが、システム構築時におけるカスタマイズ、大きな外部委託費、ユーザーによる開発・オペレーション業務等、コスト増加要因が比較評価することで把握でき、効率化の可能性がうかがえた。また、3団体の費目ごとの比較評価から、端末の保守に代わる保険活用、パソコン・リーダーによるユーザー部門サポート体制等の、コスト削減、効率化方策としての有効性も確認できた。
このように比較評価は、各項目において優れた事例と比較し、効率化の可能性や問題点を抽出するという面で有効である。また、これに基づき情報システムの改善を検討するというベンチマーキング的な展開も期待できる。
前述したように比較評価では、複数の地方公共団体の比較だけでなく、同一団体の時系列的な比較もある。時系列的な比較評価に関しては、以前と比較して改善された部分、悪くなった部分を明らかにするという点で有効であるが、組織内に完結することから複数の事例による比較評価ほど、改善の余地や問題点を明らかにすることが難しく、また、ベストプラクティス(最も良い事例)に学ぶ等のメリットも期待できない。
したがって、単独評価よりは時系列的な比較評価、時系列的な比較評価よりは複数事例による比較評価がより大きな効果が期待できる。複数事例による比較評価に関しても時系列的な比較を行うことが可能であり、複数事例による比較評価により評価サイクルを構築することが最も有効であると考えられる。しかし、評価に必要な労力も評価の有効性に応じて増大することにも留意する必要がある。
図2−14 経済性評価有効性と疲労
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