2−3 ユーザー部門の対応
以下のような対応をユーザー部門で行うことにより運用管理の効率化が期待できる。
(1) 情報リテラシーの向上
情報システムを導入したものの、実際には想定したユーザーすべてが必ずしも利用していない場合があり、これでは情報システムの導入効果も半減する恐れがある。
特に情報の共有化等を目的としたネットワーク系の情報システムでは、すべてのユーザーの参加が望ましい。
ユーザーが情報システムを利用しない理由は様々であるが、もっとも多いのはコンピュータ等への抵抗感や知識の不足であろう。
したがって、研修等を実施することでユーザー全体の情報リテラシーを高めることが望まれ、これにより組織全体における情報システムの無駄のない利用が期待できる。
また、ユーザーの情報リテラシーが向上することにより、誤操作によるトラブルやアプリケーションの利用方法に関する質問等の減少も効果として想定される。
また、最近ではヘルプデスクによるユーザー・サポートのほか、ユーザー部門におけるピア・サポート(同僚による支援)を積極的に活用しようという動きも見られる。
つまり、情報リテラシーが高く、ユーザー支援の核となる人材を各部署に配置し、ユーザー・サポートの迅速化を図るのである。
この場合、核となる人材をユーザーの中から選抜し、通常より高度な情報リテラシーを育成することが必要となる。
ただし、この核となる人材にも、ピア・サポート以外に自分本来の業務が存在するので、業務負荷が過剰になったり、それにより本来の業務やピア・サポートの質が低下しないような仕組み作りが不可欠である。
具体的には、「ピア・サポートを正式な業務として認定し、成果評価に組み込む」、「ピア・サポート以外の業務を軽減する」等の対応が求められる。
また、ユーザーが核となる人材に過剰に依存する可能性も考えられ、そのようなことがないように、ユーザー全体の情報リテラシー向上も同時に進めることが望まれる。
NTT北海道支社は全拠点にLANを敷設した際に、各課に1人の割合で「PCエキスパート」という核となる人材を配置した。
このPCエキスパートは、5日間におよぶ研修により、トラブルの対応方法等に関する教育を受けている。
(2) 業務やユーザー意識の改革
通常、業務の効率化を目的とした業務改革に伴い情報システムを導入するが、実際には情報システムの導入が先行し、従来の業務慣習が継続していることも少なくない。
このような場合、構築した情報システムと業務処理方法との親和性が低くなり、情報システムの利用停滞やトラブルの多発等により、運用管理の非効率化につながる恐れがある。
したがって、導入した情報システムの機能を十分に活用できるような業務改革が必要である。
また、情報システムの全体的な有効利用や、業務改革の全体的な遂行にはユーザー全体の協力も不可欠であり、個々の意識改革が望まれる。
また、様々な効率化方策を有効に機能させるためにも、ユーザーの情報システムの運用管理コストに関する意識を高めることが必要である。
例えば、ヘルプデスクを設置してトラブルの対処方法をオンラインで検索できるようにしても、同僚に聞くのが楽だからと言ってユーザーが全然利用しないのでは無駄になってしまう。
また、ハードやソフトの標準化に関しても、全員が「私は例外」という意識でバラバラのハードやソフトを購入しようとするのであれば実現は難しい。
個々の効率化だけでなく、組織全体の効率化をも考慮した意識、行動がユーザーには望まれる。
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