2−2 運用管理体制の改善
以下のような運用管理体制の改善を行うことで運用管理の効率化が期待できる。
(1) アウトソーシング
業務を外部に委託することであり、情報システムに関連する業務を委託することで、新たな技術の活用、組織改革、コスト削減等の効果が期待できる。
(2) ヘルプデスク設置
各ユーザーが抱えている質問やトラブルに対して、ユーザーが自分で対応(セルフ・サポート)したり、同僚が対応(ピア・サポート)していたのでは本来の業務に支障を来しかねない。
そこで、質問やトラブルの正式な問い合わせ窓口としてヘルプデスクを設けることが有効になる。
本来、情報システムに関する質問やトラブルは個々のユーザーで類似しているので、一つの窓口で対応することによりユーザー個々の質問やトラブルの対応に要する時間を大幅に削減することが可能である。
ヘルプデスクでは、ユーザーからの問い合わせ及び対応策をデータベース化し、ユーザー個々の端末から検索できるようにすることで、更に効率的なユーザー支援が可能になる。
ヘルプデスクによるサポートは、遠隔地から電話、ファックス、電子メール、遠隔操作ツール等で支援するリモートサポートが一般的であり、ユーザーの端末まで出かけて支援するオンサイト・サポートは別の機能として切り分けられる場合が多い。
また、ヘルプデスクは情報システム部門等に設置され、組織内で運営されることもあるが、外部企業等にアウトソーシングすることも可能である。
端末が多い場合は、簡単な質問、トラブルに対応する1次ヘルプデスクと、難しいトラブル等に対応する2次ヘルプデスクに階層化して運営することも考えられる。
最近では、支援履歴のデータベース化等によりヘルプデスクの運営をサポートする専用ソフトウェア(ヘルプデスク・ツール)も普及してきており、大規模な民間企業等ではこのようなツールを内部におけるヘルプデスク運営に役立てている。
表1−4 販売されている主なヘルプディスク・ツールの概要
*1データベースの更新ができないクライアント・ソフトのライセンスは無料のため除外した。
レメディーによると、無料のクライアント・ライセンス数を含めるとライセンス数は2〜3倍になるという
(出典:日経BP社『日経ウォッチャー1998.4.17』)
(3) 自動化・無人化
情報システム部門やユーザー部門が行う運用管理業務の中には、コンピュータを活用することで自動化できるものもあり、自動化することにより人的資源の省力化・無人化につながり、最終的には運用管理に要する人的コストの削減に寄与する。
例えば、データのバックアップであるが、バッチファイルを作成して毎日定期的に自動でバックアップを行うように設定することができる。
また、データを保存するテープやディスクの交換に関してもチェンジャー機能を備えたバックアップ装置を使うことで自動化が可能である。
このような自動化により、これまでデータのバックアップに要していた労働力の削減が可能であり、情報システムの運用管理の効率化が図られる。
このほか、休日や時間外における情報システムの自動運転を実現することで、ユーザーや情報システム部門の余剰労働時間の削減が可能である。
また、情報システムのトラブルに関しては、オペレーション等の誤操作を原因とするものも少なくなく、運用管理業務の自動化はこのようなトラブルや、それによる業務機会損失を削減する効果も期待できる。
大規模な組織でネットワークを構築している場合、人事異動の時期におけるネットワーク・アドレスの変更業務は膨大な作業になる。
日本鋼管株式会社では、人事異動によるネットワークのアドレス変更を基幹系の人事システムと連携させて自動化している。
これにより、人事異動等に伴うネットワークの設定変更業務の省力化やミスの削減が図られている。
(4) 管理規程、ガイドライン等の整備
EUCが進展し、ユーザー個々が自由に端末や情報システムを利用するようになると、トラブルが増加し、これが運用管理業務の肥大化に直結することになる。
また、昨今のインターネットの普及からFUTZファクタ等による業務機会損失が増加する可能性も指摘されている。
そこで、情報システムの管理規程や利用ガイドラインを設けてユーザーの利用モラル向上を図ることが、トラブノレの削減、運用管理業務の軽減、FUTZファクタによる業務機会損失削減に有効である。
管理規程により、情報システム部門とユーザーの間の責任の分担やトラブルの対処方法等を明確に示すことでトラブル時の迅速かつ適切な対応が期待できる。
また、ガイドラインによりユーザーの情報システム利用の心得や、利用する上での留意点を啓蒙することで、ユーザー操作により発生するトラブルの軽減やFUTZファクタの削減が期待できる。
このほか、地方公共団体においては多くの個人情報を扱っていることから、情報システムにおける個人情報の保護に関する条例(個人情報保護条例)や規則を明確にすることが不可欠であり、これらも同様に整備されることが望まれる。
すべてのユーザーに管理規程やガイドラインを遵守させることは非常に困難であるが、これらを明確に示すことは情報システムの利用におけるモラル向上に対して長期的に寄与すると考えられる。
ただし、個人情報保護に関する条例や規則は、ユーザーにおいて厳守することが望まれる。
埼玉県毛呂山町では、庁内にCSSの整備したことに伴い、利用の効率化、個人情報保護等を目的として運用規程を設けている。
運用規程は、「毛呂山町役場庁内LAN活用共通ルール」と「グループウェア共通ルール」の二つに集約されており、その概要は表1-5に示すとおりである。
また、毛呂山町では現状の規程では不十分であるとしており、今後、情報化を推進する中で問題点を体系的に整理し、階層的な規程を整備したいと考えている。
表1−5 毛呂山町における情報システムの運用規定の主な項目
(5) 運用管理ツールの導入
昨今における分散システムの普及に伴い、CSSやネットワークの管理を行うソフトウェアである運用管理ツールの開発、普及が進んでおり、これを活用することで運用管理業務の軽減が期待できる。
運用管理ツールの機能は、資産管理、障害監視、リモート制御、稼働監視、ソフトウェアの自動配布、セキュリティ管理等に大きく分類することができ、それぞれの概要は表1-6に示すとおりである。
運用管理ツールは、上記のような機能により情報システムにおけるトラブル減少、ソフトウェア更新や資産管理等の業務軽減に寄与するが、一方で完全な機能を有した運用管理ツールはまだ存在しないことから、機能の範囲に十分留意して活用することが求められる。
また、運用管理ツール自体がある程度の導入コストを必要とする点や、複数のツールを導入する場合は機能の重複の可能性がある点等も考慮することが望まれる。
表1−6 運用管理ツールの主な機能
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