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2−1 情報システムの見直し

以下のような情報システムの見直しを行うことで運用管理の効率化が期待できる。

(1) シン・クライアントの導入

 シン・クライアントとは、余分な機能を簡略化した端末のことであり、当初、導入コスト削減から発想された。 また、余分な機能を省くことから端末側のトラブルが減少するとともに、サーバで集中管理することで各端末の運用管理業務の削減も期待できる。

(2) ハード、ソフトの統一、標準化

 ハードやソフトが多種多様であればあるほど、情報システムの運用管理に必要となる知識は膨大になり、業務も複雑になる。 そこで、ハードやソフトを組織内で統一、標準化することで、情報システムの運用管理業務の軽減が期待される。
 実際、各部署単位で異なるハードやソフトを導入している民間企業等は少なくなく、数種類のワープロソフトが混在していることも珍しくない。 この場合、組織内における文書(情報)の共有化が困難になるだけでなく、教育やサポート等も複雑になり、情報システム部門、ユーザーともに業務の肥大化が懸念される。 また、コスト等の理由から端末を一斉に整備・更新するのが難しいこと、近年、ベンダーによるハードやソフトのバージョンアップが頻繁に行われていること等も、情報システム環境を統一できない理由となっている。
 ハード、ソフトの統一、標準化は、ガイドライン等により個々の部署を統制することでも対応可能であるが、購入窓口を情報システム部門等に一元化することでより確実な対応が可能である。 また、窓口の一元化は、各部署で行われていた交渉、契約等の業務の集約、省力化にも寄与すると考えられる。
 ただし、この方策は運用管理業務の軽減において効果が期待できるが、一方でユーザーの使い勝手が阻害される可能性もある。 ユーザーによっては外部との関係や、自分の熟練度等から、組織内の標準と異なるハードやソフトを志向する場合もあり、必ずしも完全な標準化を強制せず、必要に応じてユーザーのニーズに対応する等、ある程度の柔軟性を持たせることが望ましいと考えられる。

(3) サーバの統合化

  これまでサーバの負荷分散や、ネットワークのレスポンス向上、各部署ごとの柔軟な対応等を目的としたサーバの分散化が進んでいた。 サーバを分散化する場合は比較的安価なパソコン・サーバが利用されることが多いが、パソコン・サーバの安定性は現状では必ずしも十分とは言えず、数十台から数百台のサーバを稼働させている場合、必ずどこかのサーバがトラブルを起こしているということも珍しくない。 また、多くのサーバを分散配置した場合、ソフトウェアや設定の更新、バックアップ管理、ユーザの登録変更等の情報システム部門における運用管理業務は膨大になる。 そこで、昨今、分散していたサーバを統合化する動きが出てきている。仮にサーバ1台当たりの運用管理業務の労力が同一であると想定すると10台のサーバを1台に統合することでサーバの運用管理業務は10分の1に減少することになる。 また、分散配置されているサーバを1ヵ所に統合すればセキュリティ管理等も容易になる。
 ただし、サーバの統合化にはレスポンス低下の恐れがあり、サーバ1台当たりの負荷が大きくなることから、処理能力の向上等も必要になる。また、サーバがダウンした場合の影響も大きいことから、サーバの安定性を高めることも不可欠である。
 株式会社リコー(以下リコー)では全国23拠点に点在する約210台のパソコン・サーバを拠点ごとに1台のサーバに統合する予定である。 小さい拠点は同様のパソコン・サーバに統合するが、一定以上の規模の拠点に関しては、可用性の高いUNIXサーバに統合する。サーバ統合化の効果は月額約900万円の削減が図れると試算している。

表1−3 リコーによるサーバ統合化の効果の試算(月単位)

(4) 情報システムの強化

 情報システムを構成するハードやソフトを高機能化することで、トラブルや、それに伴う業務機会損失を削減することが可能である。 代表的な方策としてはコンピュータの処理能力の向上や、サーバの二重化等があり、これにより処理が集中した時の安定稼働や、サーバが停止した場合の容易な復旧が可能になる。 一方、情報システムの処理能力がユーザーの業務量に対して不足している場合等も考えられ、この場合、CPUの処理能力向上や通信回線の増強等により、ユーザーの業務処理能力向上が期待できる。 しかしながら、このようなシステムの高機能化は高価な投資が必要であり、投資と投資によって得られる運用管理コストの削減効果や業務効率向上効果を互いに評価して、実行を決定する必要がある。    しかし、情報システムを導入してもコンピュータ利用に抵抗を示す人により全体としての有効利用が阻害される場合や端末の台数の不足が職員個々の情報システム利用を阻害していることも少なくない。 したがって、情報システムの利用を推進するためには、ユーザーが覚えやすいように簡易なユーザー・インターフェースの構築や端末の増強により、情報システムの有効利用が期待できる。ただし、安易なインターフェースの改善は、逆にある程度の情報リテラシーを有するユーザーの柔軟な業務処理の妨げになる場合もあり、情報リテラシーの教育を踏まえ必要性を慎重に検討することが望まれる。

 

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