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 ?入退院について判定委員会が設置されている。
 1998年4月より施設認可が厚生省より各県に移管している。
 設置基準を満たし緩和医療を行うに当たってはR.G.Twycrossの考え方であるホスピスの家に象徴されている。

 最も根本的なことは緩和医療に限らず全医療に共通することであるが、憲法で保障されている基本的人権の尊重に基づき社会的、経済的、宗教的に差別せず、その人のあるがままを受け入れる心と態度が必要ではないだろうか。
 次に生命倫理学の5原則に基づいたインフォームド・コンセントを受け、自己決定する権利について保障されていることである。インフォームド・コンセントは一般病棟では医師の病名告知や治療方針の決定、手術や検査前に行われるくらいであるが、緩和ケア病棟の実習においては治療方針や検査はもちろん処置やケアの一つ一つに説明がなされ、患者の意志が確認され尊重されていた。倫理的問題が起こった時にどうするかを倫理問題分析モデルで学んだ。この場合個人がどのような価値観を持っているか、問題は常に価値観の対立で起こっており、価値観を明らかにすることが問題解決のキーポイントと思われる。
 このような大前提に立った上で最も患者のQOLに影響する症状のコントロールについて、どの講師の先生からも実践と自己研鑽によって得られた貴重な多くの知識と体験を伺うことができた。
 症状マネジメントでは、主観的体験である症状をいかにマネジメントするか、UCSF症状マネジメントモデルを提示して、さらに症状マネジメントの統合的アプローチによって患者自身が症状のセルフケアを行うことを目標としていることを学んだ。今日我々が直面しているさまざまな医療問題(生活習慣病の増加、医療費の高騰、入院期間短縮や高齢化などなど)に関わる上で、患者のセルフケアを促すこの症状マネジメントの統合的アプローチは問題解決に大きく貢献するのではないかと思う。看護職が専門職としての手腕を発揮できるチャンスだと思う。緩和医療においては特に在宅ホスピスに活用していければ、在宅での最期を望まれる方の割合も増えていくのではないだろうか。
 症状マネジメントモデルと症状マネジメントの統合的アプローチを次頁に示す。
症状マネジメントの統合的アプローチのためには、症状マネジメントの方略について基本的知識、技術、ケアについて熟知しておく必要がある。
 疼痛コントロールについては、講義で教わったように病院実習の現場でもWHO方式疼痛治療指針(3段階式ガン鎮痛治療ラダー)に沿った薬物療法が副作用対策も十分に配慮されて使用されていた。薬物だけでなく、補助具などを使ったり、環境の整備や日常のケアによる援助やスピリチュアルペインに対するチャプレンの関わり、社会的痛みに対するメディカルソーシャルワーカーの関わり、ボランティアの無償の愛など多くの職種がチームとして関わることによって一人の患者を支え、その患者と家族から医療チームも人間的に成長させられるという好循環を生んでいる。講義で大きな衝撃を受けたリハビリテーションについては、実習施設ではまだあまり積極的な取り組みがなされていなかった。
 緩和ケアにおいて高率にみられる全身倦怠感は、ステロイドの投与以外には顕著な治療法が報告されていないなかで、廃用症候群に予防的に関わる「目標指向的ADL訓練」の普及と発展はこれからの緩和医療において期待できる分野だと思う。リハビリ部門を積極的に緩和医療チームに巻き込んでいく努力が必要だと思う。同時に看護婦は患者のQOL(特にADL)と提供するケアの相関関係についても再考する必要があると考える。実習施設での患者さんの一言が忘れられない。
「看護婦さんはみんなとてもやさしい。でもあんまり大事にされすぎてもねえ」。その後に続く言葉は「私はもっと自分のことが自分でできるのよ」と言いたかったのではないだろうか。
 症状マネジメントに当たって看護婦の重要な役割である傾聴する、客観的に問う、サインをモニタリングするためにはコミュニケーション技術が重要になってくる。


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