せん妄については、症状コントロールのチーム学習で取り組み発表・報告したので、抑うつについて述べる。癌患者でうつを併発すると自殺率は2倍となる。しゃべらない患者は身体症状をチェックし、それでもしゃべらない場合は危険。家族歴にうつ・自殺があれば要注意。
うつ病に対する精神的働きかけとして?現在の状態は病気であること、?回復の保証、?まずは休養を、?治療中、症状に動揺があること、?重要な決定は先延ばしすること、?自殺念慮の確認、?自殺企図をせずに苦痛を乗り越えようとすること、?保護的な環境などによって患者を支えることが大切である。否認については、癌患者の47%が否認する。その際、?診断の否認、?癌が意味することの否認、?衝撃の否認など、何が否認されているか、何が脅威なのかを把握することが大切である。
また、治療上の重要な決定があるか否か→末期に否認を解く必要性はない。防衛機構が解かれたときの留意点として→絶望・抑うつ・退行・精神症状などの状態を切り抜けるのに十分な時間があるかなどについて学んだ(抗うつ剤については省略する)。参考事例をもとにある時点における介入について各自の考え方を出し、実際に患者の取った行動と照らし合わせ、その対処方法が的確なものであったかどうかの検討と、正しい対処方法について講義がなされた。
うつ症状の診断は、抑制か、回避か、一過性の危機反応か診断されねばならず、薬剤の適切な投与や、対処・介入について専門の精神科医に診察を仰ぐ必要がある。緩和ケアには、精神科医もチームの一員として欠かすことができないし、こじれないうちに早期のコンサルティングが重要となるということを、事例を通して学んだ。
(3)スピリチュアルペイン
スピリチュアルペインについては、実習報告で詳しく述べたので省略する。
9)家族への援助
家族の危機的状況に対して家族の基本的構造を捉え、問題解決に危機理論(現実に目を向ける)を、家族のストレスや危機に対して変容理論(予測的将来に目を向ける)を用いてアセスメントし、早くアプローチをかける。家族の経験的対処方法は有効な資源であり、一番つらいと思える人が納得のいく方法が取れて、目の前のハードルが乗り越えられるように目標と時間を定め、これを励まして危機を乗り越えられるように(普通4〜6週間かかる)介入する。この際、家族間の話し合いをマネージして心の傷を残さないようにフィードバックをする。
また、スタッフは予期悲嘆(喪失の悲しみを表出することで前もってその状況を体験する)ができるように情緒的サポートをし、実際に失ったときの衝撃・悲嘆を少しでも軽くできるよう援助する。この予期悲嘆は死別の悲嘆を乗り越える(グリーフケア)ためにも必要な過程である。死後の悲嘆は長くて数年かかることがあり、深すぎると病的悲嘆となる。そのときに選んだことが一番良いと思えるように罪責感の処理を助けることが必要である。ケアに関わるスタッフはグリーフケアまで見通して、患者の入院時から家族との良いコミュニケーションをとることが大切である。
10)チームアプローチ
看護婦としてのチームアプローチとは、医師や他の専門職種の専門性を十分理解・尊重し、同じ目的に向かってそれぞれの専門性を最大限に発揮できるよう、積極的に働きかけ情報を伝達・調整していくこと。またその目標達成のために、一人ひとりがチームの目標を理解していること、それぞれの立場での役割を具現化するスキル(コミュニケーションスキル、自己発見スキル、専門職業人としてのスキル)を身につけ、愛と勇気を持って実行することが求められる。家族に対しては、家族自身が自分たちの役割を理解するように支援しなければならない。患者や家族の危機的状況に対してどのプロセスの中にいるかしっかり把握して、支援する人の自己満足とならないように、常に支援の本質(何のために、誰のために、その意味)をわかって関わること。
チームワークの実際と患者へのアプローチや自己の死生観を知るために、グループワークやロールプレイが行われた。チームの一員としての役割だけでなく、自己が看護婦や患者の役割を演じることで、どのようなアプローチが有効なのか、危機状況の中で何が求められているのか、自己の死生観確立の必要性などを学んだ。
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