日本財団 図書館


意識が明瞭なときにセデーションについての自己決定を話し合うことができるコミュニケーションが必要であろう。不穏・混乱状態で対応能力がないときの判断が最も難しいと思われ、スタッフと家族は十分過ぎるほどの話し合いが必要である。実習では、患者の死後プライマリーNs.が、鎮静しなければもう少し生きられたであろうかとか、尊厳が保たれたかということを悩んでいた。理性と感情の交錯する振り返りが現実なのだという感想を持った。

6)看護倫理
 1940年代の歴史的戦争での人に対する残虐性が生命倫理の発端となった。知識体系が繰り返し発展した時代であり、人々が究極に押しやられる時代であった。1960年代に入り医療器具の発展(呼吸器・点滴)によって医療現場において人間の生死を操作しだし、あらたに生命倫理の問題をつくりだした。1877年の大田による翻訳「看護の心得」の中で「患者の生命を脅かすものであると考えられるDr.の指示に固守してはならない」とあるが、看護もまた戦争を背景に統率的な縦系列の医療社会の中で看護の発想を固着させてきた。現場においては、何のためにそうするのか、そうすることがその人にとって良いのかということを周囲との秤にかけ、倫理的に問題がないかという判断を積み重ねて倫理観を確立することが大切である。問題と思われる事柄については、どこが倫理に抵触しているのかをはっきりさせなければならない。また、自分の傾向を知り、自分の価値観によって事象を合理化(理由づけ)しようとしていないか検証する必要がある。
 講義での事例は意見交換までできなかったが、現場では微妙な問題がたくさんあり、個人の判断にたよらずチーム全体のこととして話し合うことが大切である。病院という閉鎖的社会において、客観的にみて患者にとって良いことか、社会的に認められる方法であるかを常に考えて判断することが重要であると考える。

7)医療・福祉・介護に関わる社会資源の活用
 プライマリーナースをはじめスタッフは、外来通院中や入院中また在宅に向けて患者の望むQOL維持や向上のため、何に困っているのかをキャッチする能力が必要とされる。MSWは何のために社会資源を利用するのかという視点でもって、個々に持っている社会資源情報ファイルからその患者のニーズに沿って情報を引き出し、それを患者に選択していただく。しかし、ひとくちに社会資源といっても身体的機能を補うものから利用者の生活支援まで幅が広い。患者にとって最も有益な社会資源の利用・活用は、経験と専門知識と考えられる限りの方法を組み合わす必要がある。事例では、家族がそれぞれの役割を果たせるように細やかなアドバイスや調整、家族再構築のための援助をし、そのために社会資源を具体的にどのように活用したかということを学んだ。
 実習では、複雑といえるケースではなかったが、在宅に向けて素早い対応がなされる必要性とその実際を学んだ。自己の施設のMSWと連絡を密に取り、患者と家族の立場に立って社会資源を活用していくようにしたい。

8)進行癌患者の心理的特徴と援助
(1)基礎理論
 癌患者の心理、危機的状況への援助、危機を引き起こす状況、危機モデル、Kubler Ross死にゆく患者の心理過程、ストレス・コーピング理論、危機介入の原則と看護介入などを基礎理論として学び、2つの事例を基に、グループワークとしてAguileaとMessickおよびFinkのモデルを作成した。ここではFinkのモデルの承認段階における一次的評価(状況判断)・二次的評価(自己にとっての判断)、つまり自己認知と現実認知について非常に困難を感じた。危機・看護介入は承認の段階での介入が最も重要とされており、後に述べる信頼関係に基づくコミュニケーション技術と関連して、客観的にアセスメントして介入されなければならない。
 実習においても学んだことが実践に結びつかず、非常に難しさを実感した。紹介された参考図書「認知的評価と対処の研究」から改めて学び取り、患者の感情に寄り添いつつ、自己の再構築に向けて援助できるようプロとしての能力を身につけたいと考える。
(2) 精神症状援助
 代表的症状として、せん妄と抑うつについて講義を受けた。

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION