緩和ケアの目標は、患者とその家族にとってできる限り可能な最高のQOLを実現することである。末期だけでなく、早い時期の患者に対しても治療と同時に適用すべき点がある」。緩和医療の目指すものは全人的ケアであり、身体的・精神的・社会的・霊的苦痛をとらえて、患者のみならず家族もケアされることが重要とされる。
がん性癖痛の治療ポイント、精神的アプローチ、QOL、チーム医療、継続ケア、家族のケア、今後の課題などについても講義されたが、全体の講義のなかで詳しく教わったので省略する。私の研修目的を達成すべく、このための全てが「緩和医療とは・緩和ケアとは」の講義から始まった。
4)症状コントロール
がん患者の終末期においては、70%の患者に痛みが現れる。末期患者がその人らしく人生を全うできるように援助し、QOLをできるだけ高めるには症状のコントロールとケアが最も重要である。疼痛が緩和されないと患者は生きる意欲を失い、挫折感を抱いたり抑うつ状態となり、医療スタッフともコミュニケーションもとりにくくなる。この場合、身体症状だけでなく精神症状にも目を向けなければならない。しかしながら、「癌性疼痛」に対する基本は治療であり、たとえそれが弱いものであっても薬などで確実に取り除くべきであり、決して精神的な対応を先行させてはならない。
(季羽)
WHOでも「有効な治療法があるのに、それを用いない医師には弁解の余地がない」とまで厳しく言及されている。疼痛は95%がコントロールできるとされている。疼痛コントロールは「定期的にby the clock」「段階的にby the ladder」が原則で、モルヒネについては使用を躊躇すべきでない。疼痛治療にその依存性は生じないからである。
以下、最も多くみられる順に主な症状・徴候をあげる。全身倦怠・食欲不振・疼痛・春熱・便秘・咳嗽・呼吸困難・不眠・浮腫・口渇・悪心・嘔吐・口内炎・不安・いらだち・混乱・不穏・褥瘡・腹水・吐血・下血・胸水・うつ状態・痴呆。その中でも、全身倦怠・呼吸困難のコントロールが難しいとされている。これらについては全てそのコントロールの基本とケアについて学んだが、詳細については省略する。
看護婦は一般的看護技術がしっかりしていること、心理学的・病理学的・生理学的に症状の機序と出現形態を理解し、処方によって症状managementができることが要求される。これらの講義で学んだことは実習において体験でき、自己の施設におけるケアの質を高めるのに役立たせることができると考える。個人としては、薬剤の知識を身につける必要性がある。
ターミナルにおけるリハについて。リハにはもともと機能訓練という意味はなく、訓練は目的を達成するための手段であって、生活に焦点をあてQOLの最大限の向上のためにADLに対して具体的手段・手順を指導する。予後をきちんと診断して明確な計画を立て、生きた証を作るため(人生の意味)に実際的な改善を病室で行う。ADLが改善されることで他の構造にも良い影響を及ぼす。PCUを開設する時、PT・OTをチームに引き込むことであるなど、緩和医療でのリハの必要性とその実際的な面を学んだ。
5)生命倫理
医療現場で問題とされるインフォームドコンセントの基本原則は、生命倫理の5原則の上になりたつものであり、癌患者への告知は全てこの原則を踏まえていなければならない。つまり病状や余命の告知については、患者自身が真実を知る権利があり(生命倫理の5原則に基づく自己決定権)、患者は必ず悲嘆の過程を通ることになるが、家族やスタッフのフォローによって患者がこれを乗り越えることを信じて自分の人生を決めていく援助をしなければならないということである。
他の講義や実習においても個々のケースによって状況をみながら告知を進めていくことを学んだ。患者の告知希望を最優先し、家族もこのことを承認した上で、チームスタッフとも共通認識を持って告知すべきである。チームとして患者のこれまでのコーピング方法やその能力を分析し、また医師は、自己の認識や価値観・固定観念を押しつけるのではなく、患者と患者を取り巻く人々と同じ目線にたって告知しなければならない。また、これらの原則は告知とともに、緩和ケアではセデーションの決定においても同様に基本原則であると考える。
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