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愛と勇気を持って

医療法人財団天心堂へつぎ病院
麻生香代子

はじめに
 緩和ケア病棟開設準備中である天心堂へつぎ病院スタッフとして、下記のような目的で広く緩和ケアそのものを学んで持ちかえる。この学びと情報は開設に向けて基礎となることを自覚して研修に臨み、他のスタッフと共有できるように、できる限り正確に把握することが私の使命であった。この目的により、以下、基礎研修科目をまとめ、実習で学んだことと照らし合わせながら、考察したことを述べる。

研修の目的
?緩和ケア病棟開設にあたり、緩和ケアの基礎を学び、看護の実践能力を身につける。
?最新の症状コントロールの情報を得る。
?緩和ケアに対するスタッフ個々の思いこみや生命観を超えて、いかに共通理解の上で患者に看護が提供できるか学ぶ。

研修で学んだこと
1)文献検索
 文献検索戦略のポイントは次のようにまとめられる。?課題の明確化(具体的に記述)、?文章中からキーワードを選択、?件名索引で検索、?文献の記録と要約を記録。
 自己の施設における看護関連図書・雑誌の情報環境を整理しなおす必要があり、いつでも利用できる環境整備が必要である。また、最新看護索引の文献検索を使いこなす能力を養わなければならない。

2)腫瘍学
 腫瘍学の講義は、この後の講義−生命倫理、緩和医療、症状コントロールと看護を理解する上で基礎となる講義であった。特に癌発生の機序として遺伝子DNAの講義内容はわかりやすく、なぜ癌細胞・癌組織が増殖するのかというDNAレベルでの基礎知識を得ることができた。末期的段階に至ると積極的癌治療はむしろ患者に侵襲を加えることであり、なぜ緩和医療が必要なのか(集学的治療効果がない)という理解の基礎となるものであると考える。EBM的な問題解決のプロセスは、緩和ケアにおける治療・ケアにおいても大切な過程であり、常にこの思考過程を循環させていなければならないと考える。

3)緩和医療・緩和ケア
 緩和医療の歴史、緩和医療の理念、全人的苦痛の理解、チーム医療など、この研修を学んでいく上での緩和医療・緩和ケアの基礎的講義を受ける。
 ターミナルケアにおける「末期」とは、一般的に「現代医療において可能な集学的治療の効果が期待できず、積極的治療がむしろ不適切と考えられる状態で、生命予後が6ヵ月以内と考えられる段階」とされる。ターミナルケアを論じたり考えたりするときは、どの時期についての議論かを常に明確にする必要がある。ターミナルステージの判断は、時間の単位「月・週・日」で考え、そのステージに応じた患者と家族へのケアが必要とされる。
 「WHOがんの痛みからの解放とパリアティブ・ケア」には次のように述べられているので抜枠する。「緩和ケアとは、治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケア(Total care)である。痛みやその症状のコントロール、精神的、社会的、そして霊的問題(spiritual problems)の解決がもっとも重要な課題となる。

 

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