日本財団 図書館


 初めは、回復に対する希望が出現し、体力の低下により疑念が生まれ、不安に移行し、さらにうつ状態に進行していく。この時期は自殺企図の危険性もあり、かなりの注意が必要である。常に患者に接している看護婦は患者の言動に注意し、観察していかねばならないし、患者が悪い状態に進まないようにしていかねばならない。必要あれば、主治医や精神科の医師へのアプローチも行わなければならない。また、悲観のプロセスを踏まえた上で死の準備教育もしていかねばならないし、患者や家族が死を受容できるように援助していく必要があると考える。
 また患者に接するとき、ゆとりを持って聞く姿勢がなければならないし、患者と同じ高さの視線で傾聴し理解する態度で接していかねばならない。

(6) 家族ケア
 治療を目的としいる一般病院においては、家族は患者の看護上の協力者であることが多い。そのため、家族への援助は看護計画にあがることもなくおきざりにされがちである。長期入院やターミナル期の患者の家族は思考を精神的にささえなければならないし、家庭と病院との生活によってかなりの負担が強いられる。家族一人が病気になったため、家族全体に及ぼす影響は大きく、その援助の必要性はつねづね感じていた。家族援助の講義を聴くことにより家族援助の重要性を再認識した。
 実習において、家族ケアの始まりが入院時の面談であることを学んだ。入院時しかこれない家族もいるし、キーパーソン的家族が付き添ってくる場合が多く患者の情報が得やすいとともに、できるだけゆっくりと時間をかけて話し合うことにより、信頼関係も築け家族の情報を得ることができる機会だからである。面談を通して、(?家族の患者の病状理解はどうか、?治療や看護ケアに対する問題・要望はないか、?家族の悲嘆の状態)の情報を得て?家族も患者に対しての援助者の役割があることを伝える必要性がある。また、患者の病状の悪化に伴い身体的(看病疲れなど)・精神的問題(死が近づくことによる悲嘆など)も生じやすい。そのときどきに応じた家族ケアをプライマリーナースを中心に看護介入していかねばならないと考える。

(7)社会的ニード
 入院によって生じる社会的問題は多い。?医療費・生活費など経済的問題、?病気を抱えての退院・転院・在宅ケアに関すること、?障害を持っての職場復帰に関すること、さらにターミナル期においては、?遺産1葬儀の問題、?絶縁している家族に関することなどである。人間は危機的問題が生じたとき、自力でその問題を解決していこうとする。しかし、解決できない問題があり、相談されたり、なんらかの形で情報として得た場合はスタッフ全員で取り組み、ソーシャルワーカー(以下MSW)の専門的知識を生かし、使用できる社会資源(保健・医療・福祉サービス)を活用して問題解決していかねばならないと考える。しかし、MSWがいる病院はすべてではなへ私は今回の研修で初めてMSWの講義を聴かせてもらった。活用できる資源があっても活用方法がわからなければないに等しい。私達看護婦も多少なりの知識は得ておかねばならないと強く思った。

(8) 臨終時のケア
 死を前にした患者にとって、やすらかな死が最終の望みであろう。そのためにも、最後まで患者に苦痛を与えないように症状コントロールしていかねばならない。また、患者の心残りにならないよう会いたい人に会わせ、望むことはできる範囲でかなえられるよう援助していく。家族にも患者の病状を伝え、どうすることが患者にとって一番良いか共に考え援助していかねばならない。そのためには、時宜を得た面談が必要であり、その面談を通して家族も死が受容できるよう援助していくことが大切である。これらのことを、実際に実習で経験させてもらった。みんなで見守りながら死を迎え、死後のエンゼルケアも非常に丁寧で、最後まで尊厳を持った接し方であった。本当に最後まで患者を大切にする姿勢を学べた。これが、今後の遺族ケアにも繋がると感じた。

(9)スピリチュアルケア
 スピリチュアルケアとは何か。「死に直面してもなお、その人らしく生き切るのを助けるものは、真実の希望と愛である」。この真実と愛を提供するのがスピリチュアルケアなのである。このケアを担っているのはチャプレンさんなのだが、

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION