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最後まで患者を大切にする姿勢

三豊総合病院
秋山奈保子

はじめに

 今回、この研修に参加した動機は、平成12年4月に勤務している病院に緩和ケア病棟が開設されることになったためである。研修の目標として、?緩和ケアの基礎を学び、緩和ケア病棟における看護を実践できる能力を身につける。?実習施設における緩和ケアの実際を通して、自己の施設のケアに必要な知識・技術`態度が学べる。?緩和ケア病棟開設に向けて、必要な情報を収集し、分析し、自己の施設に活用できるものを得る。をかかげ学んできた。講義の内容も素晴らしく、実習でも得るものも多々あった。以下にこの研修で学べたことについて考察する。

研修で学んだこと

(1)ホスピス(緩和ケア)とは
 WHOでは「緩和ケアとは、治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケア(Total care)である。痛みやその他の症状のコントロール、精神的、社会的、そして霊的問題(SpiritualProblems)の解決がもっとも重要な問題となる。緩和ケアの目標は、患者とその家族にとってできる限り可能な最高のQOLを実現することである。末期だけでなく、もっと早い病期の患者に対しても治療と同時に適用すべき点がある」と述べている。
 私達医療者は誠実・感性・忍耐・謙遜・真実の愛を持って患者の全人的苦痛を理解し、チーム医療を実践していかねばならないと考える。そこには、ホスピスの語源である「あたたかいもてなし」がなければならないと思う。

(2)告知について
 告知するか、しないかの問題を考えたとき、最近の傾向としては告知する傾向になってきているが、医師の考え方や家族の希望によって告知しない場合もまだある。生命倫理的で人間の権利として「?成人で判断能力のある者は、?身体と生命の質を含む「自己のもの」について、?他人に危害を加えない限り、?たとえ当人にとって理性的にみて不合理な結果になろうとも、?自己決定の権利を持ち、自己決定に必要な情報の告知を受ける権利」があることを学んだ。このとき、日本におけるインフォームドコンセントは医師が好意的にしていることのようだが、本当は患者の権利であることがわかった。また、これからは医師の義務的な説明(どのくらいの危険性があるか、患者の側にどのような負担が生ずるか、他にどのような選択肢があるかなど)の範囲の明確化や、患者の同意についても、その有効性の明確な基準をもうけることの必要性がわかった。それらのことや今までの経験からも、私の考えとしてはやはり告知は必要であると考える。しかし、安易な告知ではなく、患者の情報をもとに告知によるメリット・デメリットについてチームで話し合い、告知の是非を判断する必要はある。その後の精神的ケアもしっかりとしていかねばならない。そのためにも、私達看護婦は医師のムンテラ(告知の場面)に同席し、ムンテラの内容を知り、患者・家族の理解度を見ていかねばならないと強く感じた。実習でも、入院時や患者の状態悪化時、医師の面談に看護婦はかならず同席していた。医師のムンテラ内容を知ることにより、医師の治療方針がわかるし、患者・家族がどのように感じているか、理解しているかを後で確認する目安にもなる。告知の後の心理の変化も、今までは単に「ショックを受けているであろう」という漠然としたものであった。しかし今後は、危機理論やキューブラー・ロスの死にゆく患者の心理過程で学んだことをもとに、

 

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