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(4)がん患者さんの家族への援助
 講義で家族援助について学び、概論で家族とは「夫婦・親子・きょうだいなど少数の近親者を主要な成員し、成員相互の深い感情的関わりあいで結ばれた第一次的な福祉志向集団である」と定義され、社会にまず存在して感情的融合のもと家族の幸せをめざす集団としてとらえるのと、現在の家族形態を見ると様々なのでお互いに家族であるという認識を持つ2人以上からなる集団を家族と定義するアメリカ的な考えもある。
 なぜ家族全体を看護の対象とするのか。それは家族の集団的役割の構造の中で一人が病気になったことにより、家族の機能や役割に影響を及ぼし、そのことで様々なストレスが生じて、そのストレスをのりきれない家族が病気になる循環的因果関係があるからである。家族が家族の機能を果たせなくなって家族システムがバラバラにならないように、家族が抱える問題を一つずつ乗り越えていく過程を見守り、無理があれば助言する立場をとり、家族が良い方向に変化して患者さんと関われることでまた家族の幸せを実感でき、充実した日々を最後まで送れるように家族全体を対象に看護していくことが重要だと思った。
 このように家族のストレスは当然のことながら、患者さんの病状、心理状態により左右されるので、家族が現実を受け入れ、その時の患者の気持ちに寄り添うことは大変なエネルギーを必要とする。家族のニードに十分応えられるように家族の持つストレスについてどのようにすればいいか、どんな対処が可能か、家族の状況に関心を向けて常に困っていることはないだろうか、情報を集めて活用可能なサポートの提供をして問題解決につながるきっかけを見つけ出すことも必要である。またコーピング理論で認知的評価と心理的傷つきやすさとは密接に関連しているといわれるように、家族一人一人がどの程度のストレスと認知しているかを理解して、その人の能力、資源、原動力となるものが欠乏している場合は特にどうサポートするか配慮していくことが望まれる。
 また家族にとって大切な人を失っていくプロセスの中で、医療者と家族の関係は協働の関係で、互いに患者さんの情報を共有して治療や看護ケアの選択において意志決定やケアの実践に参加できることが望ましく、そうすることが患者さんを含む家族の関係がその患者さんのQOLに大きく影響すること、そしてどのような終末期を迎えられたかが残された家族の適応にも関係してくるといわれている。残された家族の人がその人らしい死であった、最善が尽くせたと感じられるように家族への援助を行うことが大切だと思った。そしてグリーフケアは家族の悲嘆の深さも様々なので、感情を表出して十分悲しむというグリーフワークをサポートする必要があり、ビリーブメントケアはまだまだ大きい課題だと思った。

(5) コミュニケーション
 コミュニケーション論について学び、今まで自分が気付かなかったコミュニケーション技術や効果的なコミュニケーションが自分の課題のひとつだったので、コミュニケーション技術の基本「傾聴・共感・感情への対応」をふまえて人と関わることの重要性を再認識できた。
 コミュニケーションの出発点は、まず相手の話を聴く「傾聴」からといわれる。患者さんのそばで安心できる距離をとり、優しく見守る視線で応対し、患者さんの思いを引き出すのにどんな目的をもって話を聴くのか明確に患者さんに伝えて、患者さんの感情を反映するような言葉、態度で表して、開かれた共感を示して会話の中に見える心のサインを受け止めてタイミングを逃がさないことが大事だと感じた。
 また傾聴が効果的に行われて共感が持てると、さらに話ができて共感がふえるので、一方的なコミュニケーションではなく常に開けたコミュニケーションを展開して、患者さんの気持ちの深いところまで介入していかないと弱い共感になり、寄り添えなくなるので気をつけることも必要である。ロールプレイでは自分自身の振り返りを客観的事実と受け止めるよい機会になり、自分のコミュニケーション技術をチェックして修正してよいコミュニケーションがとれるように活用できるもので新しい発見だった。そして現実では一度伝えたコミュニケーションは事実として存在し訂正がきかないこと、ある時点にもどってやり直すということはできないし、コミュニケーションは連続性の中にあるということを理解しておくことも大事だと思った。

 

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