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残される家族にも心を寄せて

徳島県立中央病院
大塚孝子

 今回の研修に参加するにあたり、自分自身が一般病棟での勤務経験の中で、がんの終末期の患者さんやその家族との関わりでいつも難しいと感じていたことは、症状のコントロール、患者さんや家族の心理的特徴と援助方法、コミュニケーションについてであった。この研修で受けた講義を通して緩和ケアの基礎から学び、緩和ケアについて理解を深められたこと、また緩和ケア病棟のチーム医療における看護婦の役割についてロールプレイやホスピス実習を通して体験し、自分の課題について学習でき、統合して緩和ケアの概念を再構築できた。この研修での私自身の課題にふれながら学びについてまとめたいと思う。

研修で学んだこと

 緩和ケアの基本理念についてWHO(1990年)では「緩和ケアとは、治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケアである。痛みやその他の症状コントロール、精神的、社会的、そして霊的問題の解決がもっとも重要な課題となる。緩和ケアの目標は、患者とその家族にとってできる限り可能な最高のQOLを実現することである。末期だけでなく、もっと早い病期の患者に対しても治療と同時に適用すべき点がある」とあらわしている。緩和ケアでは患者さんの痛みを身体的だけでなく、精神的、社会的、霊的に把握して全人的痛みとしてとらえてケアすることが求められるが、まず身体的な痛みの軽減が行われるべきである。それは痛みのために苦しんでいる時は、その患者さんが精神的・社会的・霊的な安楽を得るには困難な状態にあり、そのことがまた痛みを増強させるという悪循環になるので、適切な除痛を行われなければならない。

(1) 疼痛コントロール
 疼痛コントロールの原則は「定期的投与」と「段階的投与」であり、その前提は積極的に疼痛コントロールを試みることにある。患者さんが痛みを訴えるまで待たないで積極的にアプローチして、痛みについてよく尋ねて観察し、患者さんが気持ちを十分表出して有効な治療が受けられることが望まれる。そして常にある痛みをコントロールする時にまず睡眠時の痛みをとることを目標に挙げ、患者さんが夜眠れることで精神的、心理的にもプラス面があり、最終的には痛みから解放されて快適な日常生活が送れて患者さんのQOLの向上につながるといえる。患者さんの痛みの原因が正確に診断され、定期的に適切な鎮痛剤を適切な量とルートで投与され、その効果について評価を定期的に繰り返し行い、患者さんの状態に合わせた癖痛コントロールが十分に行えることが可能になると思った。
 WHO方式治療指針に?非オピオイド、?弱オピオイド、?強オピオイドの3段階て?及び?の薬剤でコントロールが十分できない時は、躊躇せずに強オピオイド(モルヒネ)の使用を勧めているが、日本ではモルヒネについて認識不足、依存性を恐れて少量投与や不十分な副作用対策などの問題があり、疼痛治療に効果的に使用されていない現状があることを知った。また鎮痛補助剤の効果的な選択が重要な役割を果たすので、鎮痛補助薬剤との併用で疼痛コントロールの効果に関連がある。
 看護婦は痛みに関して正しい知識を持ち、医師や薬剤師など医療者のチームの中で情報を提供し、適切な治療が行われるようにしていかなければならない。患者さんの痛みについて患者さんに痛みがどの部位に、どんな時に強くなるかなど、よく聞いて観察し、「信頼のできる正確な記録と理由」を提示し、医師にアプローチして看護婦が患者さんの仲介役として積極的に関わるのはもちろんのことだが、

 

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