しかし今回モデルを使用し、何が問題であるのか明確にすることにより、的確な解決策がみつかった事例を学び、今までのやり方が安易すぎたためうまくいかなかったのだと気づいた。また危機モデルを使用したグループワークで感じたことは、メンバーの価値観がずいぶん危機と感じるところが違うということである。問題解決モデルではメンバーの感じ方によっては危機を回復しているとしてしまい、看護介入をせずに危機に陥れてしまう可能性があり、危機モデルでは各段階を見誤ってしまい適した看護介入をせずに最悪な状態になることもありうるので、できるだけ情報をたくさん集め、危機に陥っているのか、その可能性があるのか、何を危機としてみるかを個々の価値観を入れず話し合い、看護介入していくことが大切だと考える。モデルに使われないようにと言われていたが、そうするには何度もモデルを使い自分のものにしていくことが大切であり、現場でできるだけ訓練していきたい。
精神状態の援助に関して、不安や不眠、環境の変化などからくる精神障害は、看護婦や医師の関わり方やそのときの対処によって防げることもあるので、患者の精神状態の変化を見逃さず対応していくことが大切と学んだ。見逃さないようにするには家族の情報も大切であり、医師・看護婦・家族が一体となって患者をみつめ支援していくことが大切と考える。特に私の所属する施設では精神科の医師がいないため、看護婦が確実な情報を医師に伝えていかないと症状の悪化を招くこともあるので、看護婦の役割は大きいと思われる。精神科を受診させた方がよいと思われる患者は、少しうつ状態で家族歴のある患者、不眠やいらつきが強くなっている患者、自分で今までできていた判断ができなくなった患者、死にたいと口に出す患者と学んだ。これらの患者を見逃さないよう十分観察していくとともに、精神科を受診させるほどまで悪化しないよう早期に対処していきたい。
スピリチュアルペインに関しては、その配慮として患者が暖かさを感じるような微笑みができること、その患者を最後までみるという覚悟を持つこと、自分自身を知ってコントロールできること、患者のありがとうというサインをキャッチすることと学んだ。私には患者の全てを引き受け、最後までみる覚悟ができていなかったと気づいた。自分の都合でいやになれば避け、関わることを気持ちの上で放棄していたと反省させられた。覚悟することによって関わり方が違ってくるし、患者は守られていると感じることができる。これからは覚悟して接していきたいと思う。またホスピスとは古傷を癒さないまま持っている人達の場であり、看護婦はそうした人達のラストチャンスとして癒しの器となる可能性もあると学んだ。そのためには感性をもっと磨き、患者の心からの叫びを聞き逃すことなくキャッチしていくことが大切であり、それができる看護婦になれるよう努力していきたい。
(6)チームアプローチ
緩和ケアにおけるチームアプローチとは、チームが目標を達成するために一人ひとりが働きかけることであり、そのためには一人ひとりが緩和ケア病棟における目標を理解していること。緩和ケア病棟における目標を理解するためには、一人ひとりの中に死生観があること、患者一人ひとりに対する目標は、患者のニーズ、気持ち、考え方によってそれぞれ違うことを理解しておくことが大事と学んだ。この講義はグループワークが多くあり、それを行いながらいつのまにかチームアプローチの方法を学んでいたり、死について長時間考えることができ、非常に印象の強いものとなった。楽しくグループワークをしながらチームアプローチの方法を学ぶこの研修は、施設に戻りぜひ実施してみたいと思う。そして緩和ケア病棟としての看護チームの目標を構築し、全員で共通認識していきたい。
この研修は死について考えることに多くの時間を割いており、死生観を持つことがいかに大切であるかよくわかった。私は死は怖くなく、その過程が怖いのだとずっと思っていたが、後1年で自分が死ぬと仮定した場合何をするかと想像したら、宗教の本や死後の世界のことが書いてある本を読むだろうと考え、死を無意識に怖いものと考えていると初めて気づいた。また愛する人との別れが非常に辛く寂しいものであるということが実感でき、患者は皆こういう辛さや怖さを抱えて日々過ごしているのだと痛感できた。この気持ちを忘れず患者や家族に接していきたい。2日間プログラムに沿っていろいろ考え、知らず知らずに大事なことに気づかされ、研修の本来のありかたを学ぶことができた。
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