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 ボランティアさんにどうして清瀬病院を選んだかと聞いたところ、「ボランティア研修がない。すぐにボランティア活動ができるから」と答えられた。ボランティアの受け入れについては、有料の研修を計画し修了者を受け入れるという案が提出されたが、院長より「有料でボランティア教育をするよりも、自分の時間を捧げたいとするボランティアの心を大切にしよう」という考えから、改めて研修を実施せずに受け入れておられる。ボランティアをしていく上で研修があるということは、負担が大きいということを実感した。
 しかし、ボランティアの教育がされない分、ボランティアコーディネーターの役割が大きくなる。清瀬病院では、ボランティアコーディネーターはチャップレンがされている。ボランティアに求められる条件は、?精神的自立をしていること、感情のコントロールができる、?経済的自立ができていること、?協調精神があること、?健康的自立をしていること、といわれた。ボランティアの目的は、患者さんにとってはボランティアが関わることで、QOLの向上が図れ自己実現ができる。ボランティアにとっては患者さんと関わることで、究極的には自身の自己実現ができる。相互作用が最大限に働くことができるように調整するのも、ボランティアコーディネーターの力量だと思った。また、ボランティアさんの中には大学生もおられた。チャップレンとして若いボランティアさんには、人間としての成長をも考えて教育的に関わっておられた。1日一つの自己実現ができるということを目標にしているということであった。「ボランティアは「心」、まごころをどれだけ込められるかということ」、「医師・看護婦は主食、ボランティアは机の上のバラの花」といわれたチャップレンの言葉が印象的であった。ここにも清瀬病院の奉仕・博愛の精神、まごころで看護をする姿勢が浸透していると感じた。
 清瀬病院におけるチームアプローチは、医師・看護婦・看護助手・MSW・薬剤師・栄養士・チャップレンが関わっている。深夜から日勤への申し送りを聞き、朝(または昼)のミーティングに参加し、治療方針やケアの確認を行っている。また毎月1回の症例検討会を実施している。
 緩和ケア病棟における医療とは、緩和医療・緩和ケアをチームで行うことである。チームアプローチの利点は、患者さんを各職種の立場で違った角度から多角的に捉えることができること、そうすることで患者の多様なニーズに合わせた柔軟なケアができる。また、チームアプローチをすることは、スタッフがお互いをサポートできることである。それぞれのスタッフが自分の長所を生かし個性を発揮したケアを行い、他のチームがそれをサポートすることができる。各職種が患者さんの各々の情報を生かすためには、その情報と意見の交換を行って意思統一を図る必要がある。そのために申し送り・カンファレンスを行先しかし、この「意思統一」はあくまでも患者さんへのサポートのためであって、画一的なケアにつながるものではない。医師・看護婦・看護助手・MSWなどがそれぞれの立場で、それぞれの方法で患者さんと関わっていくことが重要であると考えた。
 清瀬病院の実習で当院の緩和ケアの問題点が明確になった。
?ボランティアコーディネーターの不在、ボランティアの教育不足
 当院のボランティアの構成員は多い。生け花、音楽、洗濯、話し相手、パソコン、運転、グリーン、口腔ケア、カウンセラーなど多種にわたっている。しかし、根本的にボランティアとは何かが理解できていない。そのため、ボランティアの押し売りになっているように感じる。その原因は、ボランティアコーディネーターの不在であると考える。
?チームアプローチについて
 当院のチームの構成は、医師(PCU、放射線科、精神科)・看護婦・MSW・薬剤師・栄養士・ボランティアと多種にわたっている。現在当院では、PCUカンファレンスが1週間に1回しかない。また、看護婦間の口頭での申し送りがない。チームで患者さんに関わっていくためには、各職種間の情報交換が必要になる。他職種がそれぞれの役割を果たせるように調整する(コーディネートする)のは看護婦の役割だと感じている。今後、申し送りの検討、カンファレンスの検討が課題である。

 

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