最後まで内にある力を生かす
綜合病院山口赤十字病院
小野芳子
平成10年10月12日から12月8日まで緩和ケアナース養成研修を受けた。研修で学んだことを報告する。
今回の研修の目的と課題は以下のとおりである。
〈研修目的〉
?緩和ケア看護の基本を理解する
?実習を通して、他施設の緩和ケアの実際を知る
?山口赤十字病院の緩和ケアの現状と比較し、問題点を考える
?今までの自己の看護を振り返り、不足している点を明確にする
<課題〉
?自己の課題「緩和ケア基本理念概念図」の完成――そのために理論を学習する
?チーム医療のとりかた
?患者・家族のニーズのとらえ方
?クリティカルパスの導入の確立
?自己の死生観の確立
?ターミナル期の患者の轡状態の実態
?PCUにおける看護婦の燃えつき症候群の実際
講義から学んだ緩和ケアの看護の基本
講義を受けて感じたことは、当院で行っている緩和ケアは基本はできているということである。恒藤先生の緩和医療の講義、吉田先生の緩和ケアの講義、症状コントロール(症状マネージメント、精神変調、全身倦怠感・死前喘鳴、ターミナルのリハビリテーション、癖痛コントロール、消化器症状)の講義については、当院で行っていることと大きな差はなかったが、今までの自己知識の確認と整理ができた。
進行がん患者の心理的特徴と援助については、危機理論について症例をもとに学ぶことができた。今まで本を読むだけでは理解できにくかった危機理論をグループ学習でき、有意義であった。スピリチュアルペインについては、言葉しか知らなかったが、沼野先生のチャップレンとしての霊的痛みの講義を受けて理解できた。これらの講義を通して感じたことは、今までの自己の看護は、患者さんに対する精神的援助が不十分だったことである。
コミュニケーション論の講義ではロールプレイで実際に患者さんの立場になることで、看護婦とのコミュニケーションがいかにとれていないかということが実感できた。看護婦の立場では患者さんの話を聞いているつもりでいたが、「聞く」というレベルで「聴く」ことはできていないと実感した。コミュニケーションの講義から、患者さんの気持ちに添うことが緩和ケアの基本姿勢であり、そのためには患者さんの話を「聴く」こと、患者さんの心の声をも「聴く」ことではないかと感じた。
チームアプローチの講義では、緩和ケアにはチームアプローチが必須であるといわれているが、そのことに確信が持てた。体験学習という講義内容であったが、チームという考え方、チームの役割について学ぶことができた。また、死を疑似体験することで自分なりの死生観の確立もできた。
いままで緩和ケアに携わって、緩和ケアに関わる看護婦のストレスをどうにか解消できないかということも、大きな問題でありテーマであった。そのストレスを解消する一つの方法として、理論を学ぶということがあげられると考えた。例えば、末期の患者さんのたどる心理過程、危機に陥った患者さんにどのように関わっていけばいいのか、家族の心理、家族に関わるのはどうしたらいいのかという家族理論、などについて学習できた。
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