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一歩前に踏み出して

医療法人社団かとう内科並木通り病院 
大口浩美

はじめに

 今回の研修は、急激に増えている緩和ケアに対し質が問われ、その教育の場もきちんとしたものがないということで行われたと聞いている。私がこの研修に参加した目的は、緩和ケアでの一年間の経験を踏まえ、基礎からの学習をして再確認を行い、新たな知識を加えた上で、他施設での実習をすることにより、自己の成長とともに当院へその学びを還元するというものであった。具体的には、症状コントロール、家族ケア、チームアプローチなどを特に深めたいと思っていた。今まで、口々の忙しい業務の中でなかなか振り返る機会もなく、ましてや系統だてて十分な学習をしてきていたとはいえなかった。はたして本当にこのままで良いのだろうか、と考えていたときであり、この研修に参加したことで、振り返りだけでなく現在の自分の位置を確認するとともに先をみることができるようになった。このことは、私にとって今後緩和ケアナースをしていくにあたり、大変大きな影響を与えることになったので、ここにそのまとめをしたい。

研修での学び
 (1)症状コントロール
 症状コントロールについては、主だった症状をいろいろな角度から学ぶことができた。いくつかの理論やマネージメントの方法などを学んだことで、統合的なアプローチを系統だててしなければならないという認識にたつことができた。しかし、症状コントロールとは別のコミュニケーション理論でも出てきたが、その立派な理論を使おうとするあまり、自分を見失って使われるようではいけないと思う。正直なところ理論やモデルなどといったことは苦手だが、普段から意識的に取り入れ、活用していかないと身にならないと思うようにはなった。頭の中だけの知識で活用することは難しく、意識しすぎて無理な引用にならないように自然に取り入れていきたい。何ごとも物事を理論だてて考える習慣も必要だが、自分の中で消化してから活用できるようになりたいと思う。
 また、症状コントロールにおいては、看護婦はチームの中心的役割を担い、冷静に評価して関わっていかなければならないということも、認識させられた。そのためには、知識や技術も正確で十分なものが求められる。実習をさせていただいた国立がんセンター東病院では、あまりにも見事に看護婦が疼痛コントロールに携わっている姿をみて驚いた。投与経路の違いもあったが、痛みのアセスメントが適切になされ、それに添ってレスキューを選択し、時にベースアップもなされ、患者さんが痛みで待たされることがない。もちろん、事前に医師からの許可が出ている範囲ではあるが…。当然コントロールの期間も一週間程度と速い。ある看護婦が「苦痛な症状をすぐに取り除いてあげられないようでは、緩和ケアに入っている意味がない。待たせることは自分たちの理念に反する」といった姿に、緩和ケアナースとしての自信と誇りを感じた。私には、そこまで言い切れる実績がない。おそらく他の症状コントロールにおいても、治療は医師の範囲という気持ちがどこかにあり、その背景にはやはり勉強不足という基本的な姿勢が影響していたと思われる。患者自身も一覧表を用いて薬品名や主・副作用について説明を受け、それについて理解して治療に参加している。例えば、排便コントロールで「微妙な毎日の違いは本人にしかわからないので、ラキソベロンの滴下は自分で調整していきましょう」と、在宅を見越しているとはいえ始めから指導されている。もちろん看護婦が指導をしながらではあるが、患者が共に治療に参加している認識にたつことができていたようだった。

 

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