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私たち看護婦は起こりうる状況を予測し対応していく必要がある。そのためにも癌の形態をよく理解しておかなければならない。
 緩和ケアの考えからも、治療過程で起こってくる患者の苦痛緩和に積極的につとめなければならない。
?癌治療におけるEBM(Evidence-based Medi-cine)
 根拠に基づいた治療方針の決定。従来の治療方針の決定は、経験的で病態生理が重視され権威主義的であった。その結果クレスチンの過剰投与(使いやすく副作用がないというだけで使用されていた)、胸部レ線による肺癌検診(きちんとした根拠がない)、脳循環改善薬の使用が起こった。EBMというのは私にとって初めての情報であった。診療の質を高めるために本当に必要な治療なのかどうか検証していかなければならない。

 (6) 緩和ケアにおける医療・福祉・介護に関わる社会資源の活用について
 この講義を通し痛感したのは、医療者である私たちはあらゆる社会資源に通じていることが必要であるということであった。その違いにより患者・家族の受けるサービスに大きな差が生じる。
 医療、保健、福祉、民間医療・福祉関係サービスの内容をよく吟味し、社会資源の利用する場合の視点として、何に困っているのか、何を必要としているのか、どうしたら入手できるのか、入手できない場合の手立てはどうするのかアセスメントし、必要なサービスを最大限提供していくことが必要である。知識不足によるサービスの格差があってはならないと思う。

(7)症状コントロールについて
?症状マネジメント
 症状マネジメントはカリフォルニア大学サンフランシスコ校にて開発されたものである。このモデルは様々な状況での患者の症状に適用することが可能である。症状マネジメントの中心は患者である。患者がいかに自分の症状を生理的・病態的・心理的な機序について知識を持ち、患者の望む状態にセルフケアできるようにするか専門的に私たちがアプローチすることなのかと思う。しかし、セルフケアを中心にしているこのモデルをターミナル期の患者にどこまで使えるのか疑問である。患者が自身の症状を詳しく分析し状況をよく知るということは、今後求められることであると思う。特に慢性疾患、在宅療養の際には必要であり、癖痛のコントロールにおいても重要であると思う。最良のQOLを目指して!
 ?精神変調・全身倦怠感・死前喘鳴
 精神の変調に関しては[不安・せん妄・うつ]、全身倦怠感、死前喘鳴鎮静について、それぞれのグループで定義、病態生理、治療、看護を学習しプレゼンテーションを行った。項目についてあらゆる文献を集め、学習することで、講義で聞くよりも具体的で理解を深められたのではないかと思う。ここでは具体的な内容は省略する(この学習はたいへんでした。特に文献の読み込みに苦労しましたが良い学習になりました)。
 ?ターミナルのリハビリテーション
 リハビリの基本は日常生活をみることである、ということから始まり、この講義は私のリハビリに対する認識を新たにした。基本は“全人間的復権”であるといわれた言葉は印象的であった。動けないことでどんどん弊害がでるが、この講義を通し私たちがあきらめていたのではないかと思う。現場で気付いた他部門でしてほしいことはどんどん声に出し、強調していかなければならない。患者・家族が何を望んでいるのかをアセスメントし、リハビリのメニューにとりいれていくことも学んだ。リハビリでの服装のこと、くつのこと等眼からうろこがとれた思いである。講義はかなり具体的であり、うなずくことばかりであった。入院侍、家の見取図を写真を持ってきてもらうことで生活状態、価値観等もわかるということであった。リハビリは、患者の価値観をもとにADLを拡大し、最終目標はQOLの拡大であり、それが全人間的復権であると思う。
 ?疼痛コントロール
 疼痛のほとんどはオピオイドの使用によりかなりコントロールできるようになってきたが、神経性の唇痛はオピオイドだけでは困難であり、鎮痛補助剤が必要になる。しかし日本の現状として、モルヒネ使用量が先進国のなかでは最低レベルであるということは忘れてはならないと思う。ホスピス等積極的に使用されている反面、偏見等の問題で十分使用していない現実がある。

 

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