日本財団 図書館


この病院でよかったと思われる看護を

和歌山県立医科大学附属病院
岡本恭子

研修で学んだこと

 (1) 生命倫理について
 生命倫理の5原則は、?成人で判断能力のある者は、?身体と生命の質を含む「自己のもの」について、?他人に危害を加えない限り(他者危害原則)、?たとえ当人にとって理性的にみて不合理な結果になろうとも(愚行権・一人にしてもらう権利)、?自己決定の権利を持ち、自己決定に必要な情報の告知を受ける権利がある。
 現在の医療の現場は、奥行、幅ともに広くなり、インフォームド・コンセントのより重要性が叫ばれ、自己決定のために必要な情報として医療者は、どのくらい危険があるか、患者にどのような負担を生ずるか、他にどのような選択肢があるかについて情報を与えなくてはならない。しかしこの原則からいくと、今問題になっている麻薬の乱用、精子の売買、臓器の売買等は規制することができなくなってくる。どこで歯止めを利かすのかが重要になってくる。世相、あらゆる価値観、その人にとってなにが一番なのかをよく吟味する必要がある。
 問題となるのが、患者の理解能力と同意能力である。
能力が十分でない状態である場合はどう判断すれば良いのか?疑問である。
 患者の治療拒否権に関しては、判例から「人が信念に基づき生命にかけても守るべき価値に従い行動することは、公共の福祉などに反しない限り違法ではない」とし、自己決定権について、「交通事故による救急治療など特別な理由がある場合を除けば、人生の在り方や死に至るまでの生きざまを自ら決定でき、尊厳死を選択する自由も認められるべきだ」とした。
 価値の多様化に伴い、その判断の多様化も求められているように思われる安楽死・尊厳死に関しては、医療技術の進歩に基づく理論的な問題点として、?治療の進歩、?ホスピスの基本原則としての安楽死反対、?出生前診断と選択的人工妊娠中絶、?鎮痛法の開発と普及度のギャップ等あげられるが、外部性(チェック機構)を導入する必要がある。
 決めるということは、常に過ちの危険性がある。決定に関しては次の3点が重要となる。?自分のことは自分で決める。?医師と患者と合意の上で決める。?第三者が判断する。
 今回の講義を通し、今医療の倫理として何が問題になっているのかが明確になった。医療の進歩に伴い新たに出現してきた問題、時代とともに変化する論点、私たちが決して眼をそらしてはならない現実を認識し、常にその渦中の人間として自己の倫理性を高めなければならない。

 (2) 看護倫理について
 倫理とは、人間と社会の接点で生まれ、社会と人々が生きていく中でどうあるべきなのかということである。歴史的には1877年「看護の心得」のなかで、患者の不利益になることは医師の指示であっても固守してはならないと記されている。しかし昭和26年には、「看護婦はいかなる品位をもち、いかに行為すべきか。患者に不快な感情を与えない。技術の錬磨、医師の命令を完全に遂行する」とある(軍国主義の系列の中ででてくる)。このことは体系化されたシステムのなかで脈々と流れている。
 緩和ケアは、いままでのルチーンを越えなければならない。常になぜこういうことが規則としてあるのかということを考えていかなければならない。「看護婦の倫理規定」に、現実の状況下において常に可能な限り高度な看護を提供するとあるように、常にその時々に看護をどう変えていけばより良い看護が提供できるのか、規則を守ることが良いことなのかどうなのかを計りにかける必要がある。

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION