心理的な問題、スピリチュアルな問題、QOLの向上等といっても、まずは疼痛コントロールができているか、ということが基本ではないかと思う。患者さんは「この痛みさえなければ…」ということをしきりに言われると思う。
スピリチュアルペインの講義では、人間的な関わりを学んだ。患者さんの最後に関わり、人間関係を築けるのは医療従事者であり、自覚を持つこと、役割の大きさを感じた。私たちの関わりようで、患者さんの辛い気持ちが少しでも癒されればと思った。
恒藤先生が、緩和医療学の講義で、Cassidy Sのホスピスケアの真髄という図を紹介され、「右下の絵は、患者も援助者もお互い裸同士になり、手には何も持たず、援助者の与えることのできるものは自分自身であることを示している。ホスピスケアにおいては、このように知識や技術だけをいうのではなく、病気を持ち悩み苦しんでいる人への全人的関わりが要求される」と言われていた。とても印象的で、これには初めに述べた、ホスピスナースはしっかりとした死生観と、成熟した人格を持っている必要もある。そして、何よりも大切なことは、人の言葉に耳を傾けることができる心である。ということが再び思い出された。
また、沼野先生は経験から患者さんの気持ちを教えてくれて、新しい発見が多くあった。患者さんは私たちの世話にならないと生きていけないという遠慮があり、私たちから見捨てられはしないかという恐れがあると言われていた。患者さんがそういった思いを持って遠慮していることを忘れず、大切に思って一生懸命ケアしているということを伝えていきたいと思った。言葉に出すことで患者さんも自分の尊厳が守られていることを確認でき、安心されると思った。
コミュニケーションにおいては、ロールプレイをすること、SPによるロールプレイを見ることで、どこがどうダメなのか、多く気付きがあった。共感的コミュニケーションについては、上手くパラフレーズすることが患者さんを「わかってもらえた」という気持ちにさせ、これが感情に焦点を当てるということなのかと思った。
国立がんセンター東病院での実習は、他の施設を見せていただくことで、自分のケア、当ホスピスでのケアについて客観的に振り返ることができ、とても良い経験となった。実習報告でも述べたが、ナースが症状コントロールに主体的に取り組まれているところ、在宅ケア、看取り時のケアについては、参考にさせていただく点も多くあった。
すべての研修プログラムが終わり、振り返ると、とても多くの学び、経験ができたと思う。上記に述べたことは、今後私が理解を深めていきたいと思っていることでもあり、課題として取り組みたいことである。目標であった、自分の振り返り、土台づくりができ、今後の課題が明確になったと思う。緩和ケアではナースが担うところは多く、様々な知識・技術が要求される。しかし、その役割の大きさにやりがいを感じると同時に、偶然とし自分の自信を失い、辛くて逃げたくなることもあるのも私の本当のところかも知れない。辛いこともあるが、その分、自分自身の成長、患者さんとの出会いとその関わりの中での喜びの大きさは、他にはないと思っている。今後学んだことを基に課題に取り組み、ホスピスケアの実践のなかで、私はひとりの看護婦として、人間として、患者さん・家族と向き合い、今の状況は何を意味するのか、問題の本質は何なのか、私は何を知ってないといけないのか、私にできることは何なのか、今必要なことを私はわかっているだろうかということを自分に問い続けていきたいと思う。
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