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その段階に応じた援助方法がわかる。危機理論はこれだけ時間をかけて勉強しないといけないもんなんだと思った。また、田村先生がLazarusのコーピング理論の資料のなかから、「心理的ストレスの概念が人間行動を記述する概念として不可欠なものであるということは、学者の間でも異論はない。ストレス病の存在も否定できない。問題は、Aはなぜ離婚によってストレス病を引き起こし、Bはほぼ同じ条件で新しい建設的な仕事へ立ち向かっているのかという差異の根源は何であろうかということである」というところがおもしろいんですねえ、と言われた。本当にそう思うし、ここを考えて介入していく方法を見つける必要があると思った。
 チームアプローチでは、研修の進め方がおもしろく、ロールプレイについても、作業をいろいろしながら、いろんなことを気付き、学んだという実感があった。強烈だったのは、遺書を書いたことだった。死ぬとなると私はこんな言葉を残そうとするのかと新たな発見だったし、悲しくて仕方がなかった。死生観についても考え直すことができた。
 家族看護においては、家族システム理論、カルガリー大学家族看護学の紹介もあり、興味があって以前講習会にも出席したこともあったので、興味深く聞いた。しかし、家族のアセスメントはできても実際どう介入するかは難しく、それは家族療法と呼ばれるもので、家族に変化が起こるには、私たちもトレーニングしなければ無理ということだった。
 家族の問題については、家族で話し合い、お互い譲り合える部分を探し、解決することが一番であると思う。家族というひとつのユニットは、自らの問題に気付き、自己調整する力を持っている、と言われている。それには、時に第三者が入る必要があるのだが、これがトレーニングを受けないと難しいのである。これについては今の自分にはまだ難しすぎる課題であると思った。各論においては再び危機理論、ストレス・コーピング理論が登場し、家族においても考え方が有効であるということだった。これらの理論が再登場したことで、その重要性がわかった。その他、興味があったのは、Transition theoryでした。私たちも人生の中で役割は次々に変わりますし、変わるごとにどうしょうもない不安感で「これからやっていけるだろうか」という気持ちになる。患者さんの死後、残された家族もそんな気持ちになるであろう。そうなる前に、私たちは家族の将来を見据え、早くから準備していく、そしてもしもの時あわてないように援助をするということはとても大切なことであると思った。家族の将来まで見据えた援助とはすごいと思った。しかし、当ホスピスでは在院期間が短く、悲嘆の中にある家族に死後の準備が十分できているかということは難しいものである。その分、遺族ケアを充実することが必要であると思った。
 精神症状の援助についての講義では、終末期に起こりやすい問題として、せん妄、うつ病が大きくあると思った。終末期におけるせん妄はさまざまな要因を含み、その対応は難しいものである。しかし、せん妄がつづく状態でその人の尊厳を守られるであろうか。できるかぎり早くサインに気付けることが大切で、除けるかぎりの要因を取り除き、やはり薬物において対応することも必要になる。また、せん妄をコントロールすることは在宅患者さんにとっては重要なことで、せん妄によって家族が介護が無理であると判断し、再入院となってしまうことが多い、と実習施設でも言われていた。せん妄の要因として、講義で学んだことに加え、実習施設では睡眠パターンの変調から昼夜逆転となり、せん妄を引き起こすということを言われていた。人間の睡眠は放っておくと後に後にずれてくるというのである。そのため、不眠に対応することもせん妄防止につながると学んだ。抑うつについては正常な悲嘆として見守っていくことができる時と、病的であると判断し、危険から守るということが必要な時があり、講義では症例を通してその見極めの重要さを学んだ。
 症状コントロールについては、ラーソン先生の講義が聞けて良かったと思った。UCSF症状マネジメントモデルについては当ホスピスでも勉強会をしており、研究のため症例をとっている。これからの新しい考え方であり、患者さん中心で認知レベルで痛みをとらえるという考え方は、ペインマネジメントにとって有効であると思っている。その他疼痛コントロールについては授業時間が少ないと思った。実際の何例かの事例を用いて説明していただきたかったと思った。実際はモルヒネだけでコントロールする現状はなく、モルヒネの副作用対策も含め、様々な鎮痛補助薬の使用、神経ブロックなど疼痛治療は積極的であらゆる方法を行っていると思う。

 

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