人の言葉を傾聴する心
淀川キリスト教病院
内田香織
ホスピスナースに要求されるものとして当ホスピスの柏木先住は、「基本的な看護技術に加え、末期患者特有の痛みをはじめとする多くの不快な症状の理解と、そのコントロール法に精通していることである。また、ホスピスナースはしっかりとした死生観と、成熟した人格を持っている必要もある。そして、何よりも大切なことは、人の言葉に耳を傾けることができる心である」と言われている。しかし、時には患者さんのケアをする中で上手くいかなかったり、方向性を見失ったり、不全感が残ったりすることがあり、いろいろと迷いつつ日々が過ぎていっているのが実際であった。そこで、ホスピスでの勤務が1年過ぎ、患者さんにケアする中で、ホスピスナースとして何をしていくべきか、ホスピスナースとしての役割を、今までの実践を通して自分なりに考えてみなければと思ったのである。そこで、この研修に参加させていただくことで、何か自分に土台というか、今後へのステップアップにつなげられるものがほしいと思った。また、自分の施設から離れ、自分を見直すこと、他の施設ではホスピスケアの問題についてナースはどう取り組んでいるのかを知り、視野を広げられる機会であると思った。そう思い、この研修を通して学んだことを以下にまとめたい。
緩和ケアの基礎を学ぶため、それぞれの講義があった。緩和ケアに必要な科目をすべて学ぶことができ、とても良しい機会を与えられたと思った。ただ、ソーシャルワーカー、緩和医療(総論)、疼痛コントロールの授業の時間が少なかったことが残念に思った。
それぞれの講義から、印象深かったことをまとめると、まず文献検索の講義は初めいったい何をするのかわからなかった。しかし、今後教えていただく機会はそうそうないと思うが、とても重要なことで、研究活動を進めるうえでは不可欠なものである。文献を探すことに、結構膨大な時間を費やし、かといって本当に必要な文献は探せていなかった。本当に欲しい情報の絞り込みをし、それを書き出しキーワードを探すことが文献検索の近道であるということがわかった。
腫瘍学においては、がん患者のターミナル期しか知らなかった私にとって、遺伝子レベルでのがん自体の発生についてや、がんの合併症、診断・治療は知らなかった基礎の部分を埋めるものでとても重要だった。ターミナルケアをするからといってその時期のことだけというものではなく、その発症から手術や化学療法、放射線療法などの経過をたどってきた患者さんを理解するという意味で、「がん看護」という広い視野で学ぶことも必要だと思っていたからである。また最後に先生が言われたEBMについて、とても興味があった。看護の領域でもEBNということが言われ、私たちの看護行為もどれだけ論理的根拠に基づいているかということを追求していく必要があるのである。
田村恵子先生の講義では、危機理論について学んだ。危機・ストレス・コーピングについては、終末期患者の心理では押さえておかないといけないところだが、実際働いているとなかなか理論にまで手がのびない状況だった。また、AguileaとMessickのモデル、FINKの危機モデルについては実際モデルを使いこなすという作業をし、大変だったが勉強になった、身になったという実感があった。患者さんの危機的な状況というものは見ていてわかるものである。ショックから立ち上がれない、立ち上がろうと努力しても苦しくてしかたのない状況にいる患者さんがいる。それはなぜなんだろうと思ったとき、AguileaとMessickのモデルを使用すると、その人の足りないところ(バランス保持要因の欠けているところ)が明らかになり、介入方法の手がかりが見えてくる。また、事前評価もできる。FINKを使えばその人が今どの過程にいて苦しんでいるかがわかり、
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