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入浴介助時のボランティアの患者に対する注意深い対応。主治医だけでなく、ホスピス医全員で一人の患者について行われる検討。医師と看護婦が一緒に申し送り、カンファレンス、検討会等に参加する姿。これら全て、チームアプローチの実際だと学んだ。
 誰が発言しても、しっかりと耳を傾ける姿勢も大きな学びになった。“傾聴する”ことがスタッフの意見に対しても行われていた。チームアプローチのポイントは、役割の尊重だけでなく“個人を尊重する”ことだと学んだ。
 ?看護婦の役割
 看護の専門的知識と技術を持った“患者さんの良き理解者”であることだと学んだ。
 ?教育について
 ホスピスケアにおいては、プライマリーナースと患者及び家族との関係が緊密なために一人一人の看護力が問われる。看護力の格差を補うために、プライマリーナースを2人にしてあった。また、カンファレンスが頻回に行われ、責任を分け持つ工夫がされていた。個人の教育のためには勉強会や研修が行われていた。人間教育においては、キリスト教を中心にして礼拝やお祈りの形で日常的に行われていた。この人間教育は重要であるが、宗教的背景のない当院で行うことは難しく、十分な検討が必要であると思う。

まとめ

 ?緩和ケアの理念
 専門的知識を持つ医療従事者と周辺のスタッフたちによって、患者及び家族の権利や自由を侵害することなく、十分にTotal Pain(身体的、精神的、社会的、霊的痛み)を癒し、終末期の“生”を全うするために行われるべきケア。
 ? 看護の目的
 専門的知識と技術に基づいて・Total Painに対する介入により、終末期における患者の「最高のQOLの実現」を支援する。
・倫理的介入により、終末期における患者の「その人らしい“生”が全うできる」ように援助する。
・多角的な介入により、患者家族の苦痛が軽減されるように援助する。
 ?自分を見失わないために
 人間とは、自分とは、存在とは…。自分の内面を見つめ向上させていかなくてはいけない。また、他者の気持ち、他者における自分の存在の意味、他者からの影響等について考えなくてはいけない。そのためには、豊かな感受性と一つのことにとらわれない柔軟な考えを持つことが必要だと思う。そして、前向きな考えとユーモアの精神を忘れない心が必要だと思った。気負わずリラックスして誠実に取り組んでいくことが大切だと思う。
 ?自分の施設において
 研修での学びと実習での体験を通して、緩和ケアナースとしての基本を学ぶことができた。具体的な緩和ケア病棟の設置については未定だが、今の病棟においてもこの学びを生かせるように努力していきたい。緩和ケアの理念は、医療全体に必要なことだと思う。このことを忘れずに実践に努めたいと思う。

おわりに

 始まる前は、2ヵ月間の研修は長くてつらいのではと思っていた。しかし、こうして終わってみると、まだまだ続けたい気がする。学びはたくさんあり、自分自身の成長にも役立ったと思う。しかし、学べば学ぶほどに自分の勉強不足を感じさせられた。これからは、現場に戻って実践しながら学びを続けていこうと強く思っている。

 

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