誠の愛をもって
大津市民病院
大岩 都
はじめに
大津市民病院において平成11年4月緩和ケア病棟が開設されることとなり、その準備委員として日々検討を重ねてきた。今回、看護協会主催の緩和ケアナース養成研修に参加する機会を得て、2ヵ月にわたり学習することができた。その研修内容、また病院実習により学んだことを基礎として、緩和ケア病棟における医療・看護のあり方、病棟運用上の課題について考えたことを述べる。
研修目的と目標
〈目的〉
緩和ケア病棟における終末期患者とその家族のための緩和ケアの質の向上を図るため、緩和ケアの基礎を学び病棟において看護を実践できる能力を養う。
〈目標〉
?緩和ケアにおける看護婦の役割とチームアプローチについて学ぶ。
?進行がん患者の全人的苦痛とその援助を学ぶ。
?緩和ケア病棟の運用方法について学ぶ。
研修内容
(1)緩和ケアにおける看護婦の役割について
緩和医療は、WHOの定義によると、対象は治癒を目的にした治療に反応しなくなった患者とその家族であり、内容は痛みや他の症状のコントロール、および精神的、社会的、霊的な苦痛・問題に対する積極的で全人的なケアである。そして目標は患者と家族にとって最良のQOLを実現することである、としている。治療に反応しなくなった全人的苦痛・問題をもつ患者とその家族に対するケアは、患者の人間としての権利・尊厳を重視した、あたたかいぬくもりのある、調和のとれたチームによるアプローチが不可欠と考える。従って、緩和ケアにおける看護婦の役割として以下のものがあげられる。
?痛みや他の症状の緩和
?安楽の工夫・援助
?日常生活の援助
?精神的支援・援助(不安、疑問や悲嘆、危機などに対して)
?倫理的配慮(良いケアを受ける権利、知る権利、自己決定などの擁護)
?家族への支援・援助(予期的悲嘆の援助を含む)
?チームアプローチの調整
?在宅ケアの援助
これらの役割を遂行するには、緩和ケアの理念、知識・技術のみならずケアリング能力(5つの要素:Compassion思いやり、Competence能力、Confidence信頼、Conscience良心、Commitment委託)を高めることが必要になる。
(2) チームアプローチについて
緩和ケアにおいては、患者の残された人生の質を高めるために、それらの基本的ニーズ(身体的、精神的、社会的および霊的)を満たしていくことが大切である。しかし、すべてのニーズを医師と看護婦だけで満たすことは困難である。そのため他職種の人々とともに専門分野を宙かしてチームを組み、患者のニーズを満たしていくことが重要となる。チームアプローチの利点として
?患者心理の総合的な判断が可能になり、それに基づいたケアができる。
?家族の問題、患者と家族の関係をより深く知ることができ、それに対する適切なケアができる。
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