傾聴をケアの出発点として
厚生連滑川病院
長 光代
「一人の人格をケアすることは、最も深い意味でその人が成長すること、自己実現することを助けることである」と、ミルトン・メイヤロフは著書「ケアの本質」の中で述べている。
私は「傾聴」を全てのケアの出発点とし、チームの中で患者家族との関わりを知識と経験から系統的に理論づけ、人間学として確立させていきたいと考えている。
緩和ケア養成研修での私の課題として4項目について考察したい。
自己受容と他者受容
死にゆく人々の対応には、カウンセリングの技法を超えて、「一期一会」の姿勢のような、あるいは一人の人間として「癒し癒される」、「その人らしくある」ためにできる何かを探求しつつも、疲労感を感じたり、逃げ腰になり自身を見失っていた。はたして、自身の人生観、死生観はどうなのか、患者さんから求められた時に、一緒に考えて援助できるかと悩む。「チームアプローチ」の死と向き合う講義の中で、いつも周囲の人々に支えられていることを実感し、暖かくなり感謝の気持ちでいっぱいになった。と同時に、患者さんは、いったい何を頼りに支えにしているのかと思うと、想像を絶するほどの気持ちで耐えていることや、あたりまえのことができないつらさを理解できた。まだまだ気付きが足りないことを知ったが、そんな自分を引き受けてやっていこう、自身を認めて大事にすることができたと思う。ようやく私なりの「扉」を見つけスタート地点に立てたと考える。
沼野尚美講師の「患者と最後に出会うのがNsであり、癒されていない患者との関わりの中でラストチャンスの癒しの器となりうるのがNsである」の言葉は重く、正直な自分で向かっていき、相手を大事にしたいと考えるが、そのためにはやはり、笑顔で応じること、自己を知ってコントロールできること、関わることに覚悟を持って、時にはbeingで関わること、察することのできる感性を持つことの必要性を感じた。ロールプレイでは、その時々に、相手の言葉の裏に隠されている気持ちを感じ共感できることや、それを伝えること、またその中から何を援助する必要があるのかをアセスメントすることを学んだ。
症状マネジメント
当院では、全人的苦痛に対して、各症状コントロールは遅れているが、医師のカラーがあるからと言い訳をしていた自分に気付いた。知識を持ってその症状の背景にあるものを繰り返しアセスメントし、医師にも伝えていく姿勢が必要であると考える。山形謙二医師の講義より、疼痛コントロールの原則と、痛みのメカニズムを理解した上で鎮痛薬の治療に関する知識を得ることができた。苦痛を精神的なものと安易に決めつけ対処が遅れていた点を大いに反省し、たえず積極的に総合的に評価していく必要がある。また、精神症状のアセスメントについても自殺の危険性を考えて評価し、精神医学的な介入の判断について学んだ。
患者家族援助理論
アグレアとメズィックの問題解決モデルやフィンクの危機モデルにより、危機的状況の患者家族の心理状態のサポートに関しては、何が危機なのか、また安全を守るためにも今どんな心理状態にあるのかを的確に予測把握し、状況に応じたケアを提供しなければならないことを学んだ。また、家族適応モデルや悲嘆の援助でも、
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