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最後の癒しになれれば

筑波メディカルセンター病院
沼尻  后

はじめに

 私は今回、緩和ケアナース養成研修を受講し、様々なものを学ぶことができた。緩和ケアに興味をもって臨んだ私には、いろいろな意味で非常に価値のある研修となった。研修に参加する目的は、来年6月よりオープンする当院のがんセンターにおいて、より質の高い看護が提供できるように基礎知識を得ることであった。
 研修においては、緩和ケアの基礎をきちんと学ぶことができ、専門の知識をもった講師の方々には貴重なお話やアドバイスをいただくことができた。
 また、様々な地域から集まった研修生同士での情報交換もあり、互いに学び合い、刺激になった。
2ヵ月の研修を経て緩和ケアについて学び、これからどう生かしていくか、どのような看護を行っていくか、現在の自己のなかでの考えをまとめたいと思う。

がん患者の心理的特徴の理解と援助について

 患者ははじめに何らかの症状に気づき不審に思い、病院受診を考えるところから恐怖や不安を抱く。これは言われてすぐ理解できたことであったが、今まで考えたことはなく初めて気づくことができた。そして、その後も患者は不安や恐怖と葛藤しながら受診、検査をしていく。残念ながら検査の結果が悪く、再検査や入院治療となってしまった場合、その不安と恐怖はますます大きくなっていく。まして、がん告知を受け、今後再発はしないだろうか、どうなってしまうのだろうと悩む方や、治療効果がなくがんが進行して、死を余儀なくされた方の心理的苦痛といったら、想像を絶するものがあると痛感させられた。
 これは、研修プログラムの中のチームアプローチの演習において学ぶことができた。自分ががんになり、まず治療を選択し、最後は死の宣告を受けるという設定で、そのときの自分の在り方を考えたり、遺言状を書いたりした。そんな仮体験を行うなかで、演習とはいえ、私は苦しくてとても悲しい気持ちになってしまい、涙が出て正常な気持ちを見失ってしまった。このとき初めて患者さんの気持ちがよく分かったような気がした。
 現場に戻り患者さんの前に立つとき、この体験を思い出し、患者さんのそれぞれの思いを理解できるよう努めていきたいと思う。緩和ケアを行うとき、患者や家族と重なってしまうことなく、一歩おいた立場で見ることが大切ということを言っていた方もいた。これは、自分自身が患者や家族になってしまう危険があり、看護婦のストレスや負担にもなってくるという理由からのようだ。しかし私は少し違うように考えた。患者さんの気持ちを理解しようとするときは、できるだけ患者さんの気持ちに近づき理解しようとすることが大切であると思った。時には重なるぐらい近づくことも必要なのではないかと思う。そんな気持ちを忘れず、実践で行っていきたいと思う。

がん患者の家族への援助

 緩和ケアを行う中で患者ケアと一緒に必要となってくるのが家族への援助である。家族という集団の中の一人が病気になったというだけで、家族の生活や役割は大きく乱れ、危機を招く。家族はその危機を克服し、新しい生活や役割を築いていかなければならない。
 講義の中で学んだことによると、ほとんどの場合、危機に陥った家族は危機状態から脱し、危機を乗り越えていく力があるという。私たちは、その力が有効に働くよう援助していくことが求められる。そのためには、

 

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