今の私にできることは、ただ側に寄り添い、患者のありのままを受け止め、一緒に考えていくことである。患者の心の奥底にある叫びをキャッチできるようなアンテナを持てるように、自分自身の死生観を深めていきたいと感じている。
スピリチュアルペインの講義にあったように、「どのような人の、どのような手当てを受けるかによって、その人の人生は変わる」という言葉を忘れず、真心をこめたケアをしていきたい。そのためには、患者との出会いを大切にし、二度と来ないときの流れを意識し、安心感を与えられるような、大切にされていると感じられるようなケアをチーム全体で行い、少しでも居心地のよい空間を提供していきたいと考える。
家族ケア
緩和ケアにおいて、家族とは、患者との血縁や法律体関係だけをさすのではなく、患者との関係で精神的つながりが強い形態のことを示し、患者にとってのキーパーソンは誰なのか把握することが大切である。
入院時から、患者と共に家族に対しても、援助できる用意があることを告げ、信頼関係を築いていくことが重要となる。終末期の癌患者の家族における苦痛は、患者に最も近い存在として計りしれないものがあり、その心理をよく把握し、サポートしていかなければならない。家族がどんな発達課題にあるか、家族の役割構造はどうなのかも含め、視野に入れていかなければならない。
終末期においての家族ケアとしては、前述の心理状態を十分に把握し、医療者とのズレがないように、患者の状態などの説明をその都度丁寧に行い、家族がどんな気持ちを抱いているのか、看護者が積極的にかかわり、精神的援助をしていく必要がある。家族のニーズを満たすためには、まずは患者をうまくケアすることにあり、患者が安定することで家族の精神的安定につながる。また、悲しい時には十分に悲しんでよいということを伝え、患者との死別に対しての予期悲嘆ができるように援助していきたい。そして、家族が後悔することがないように、限られた時間の中で、患者との思い出づくりを増やすためにも、患者と一緒に過ごす時間をつくる配慮をしていきたい。家族の悲嘆は長いプロセスをたどる場合もあり、看護者がフォローしていくことが大切である。
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