日本財団 図書館


患者の状態の変化を察知し、あらゆるサインを見逃さず、スタッフに看護上の問題点を情報提供し、看護チーム全体が一貫したケアを提供することが大切である。

症状コントロール
 症状の進行に伴い、様々な身体症状や精神症状が現れてくる。患者のQOLを高めるには、症状コントロールが重要である。患者の訴えをよく聞き、表情や態度にも注意を払い、よく観察することが重要である。1)の項目でものべたように、歴史を持った人間理解をすることが前提となる。患者により、症状や病状の受け止め方が異なるし、表現力も異なる場合がある。患者が何に価値をおいているか見極めないと、援助の方法がちぐはぐになることを実習を通しても学んだ。
 緩和ケアにおける看護婦は、終末期においては、何が原因で起きている症状なのかアセスメントできる能力も重要で、鎮痛剤など薬剤の作用を熟知し、経過観察できること、評価できることが必要である。病状の進行に伴い症状の変化が著しいが、検査による診断にも限界があることから、鋭い観察力、判断力が求められる。
 疼痛コントロールにおいて、看護婦は医師の指示によって処置するが、最終的に患者に施すものとして、疼痛の種類、メカニズム、鎮痛剤の有効な使用方法について深い知識とアセスメント能力が必要である。痛みのあるときほど孤独に感じることはないため、患者の側にいることが、精神的な慰安になることを実習を通して学ぶことができた。
 また、身体的、精神的苦痛により、日常生活に支障をきたすため、できる限り、苦痛なく安楽に過ごすことができるように援助していかなければならない。看護としては、症状コントロールが目的なのではなく、例えば、嘔気、嘔吐のある患者の場合、経口摂取できるように目標を設定し、QOLを高めていくことである。症状コントロールの限界と患者の希望のズレに注意しながら、できることを型に嵌まった考え方ではなく、患者にあった方法でケアしていきたいと考える。患者のQOLを高めていくためには、PTともよく連携をとり、残された時間の中で、残された能力を生かし、できるだけ安楽な状態で、患者が望むことができるように援助していきたいと考える。

精神的苦痛に対してのケア
 終末期にある患者の精神症状は、身体的苦痛と密接に関連していることが多いことを理解した上で、アプローチしていかなければならないと考える。症状の進行に伴い、身体的症状の変化に一喜一憂し、精神的に不安定で揺れる患者の心理を理解した援助がなされなければならない。
 病気や予後に対する不安、恐れ、いらだち、怒りなど、様々な感情を表出しやすいように、傾聴的態度で接していくこと、なぜ、そのような状況にあるのか理解し、コミュニケーション理論の講義で学んだように、効果的なコミュニケーション技術を生かしてアプローチしていきたい。患者の感情にそって、送られるメッセージを受け止め、共感すること、共感していること、一緒に考えていくんだということを伝えていくことが大切である。
 また、うつ状態については、終末期に多く見られ、特に傾聴的態度がケアになり得る。

社会的苦痛に対してのケア
 人間は、社会生活の中で自分の存在を確かめていくと考えられる。終末期にある患者にとって、社会生活から離れ、家族における役割を果たしていけないことは苦痛であり、生きていく希望をも絶たれてしまうことにもなる。前述しているように、患者の背景をよく理解して、その人らしい人生を全うすることができるように援助していかなければならない。
 患者とその取り巻く人間関係を、看護婦が調整することは難しいが、できるだけ患者の希望に沿うように援助していきたい。

スピリチュアルケア
 スピリチュアルペインは、人間の実存から発生する痛み、人間が持っている根源的な叫びと認識している。生きる意味への問い、人生の苦痛、罪責感、死生観についての悩みなど、自分自身が一生かかっても解答を得られない究極の問題であり、

 

前ページ    目次へ    次ページ






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION