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ただ側に寄り添って

医療法人惇慧会外旭川病院
西村真智子

はじめに

 緩和ケアとは、「治療に反応しなくなった患者に対する積極的で全人的なケアであり、痛み、その他の症状のコントロール、心理面、社会面、霊的な面のケアを最優先課題とする。最終目標は、患者とその家族にとってできる限り良好なクオリティ・オブ・ライフを実現させることである」と、基本理念としてWHOで示されている。この基本理念をいかにして実際の施設で実現させていくか、各々の文化、社会的背景、地域性を踏まえて行われていかなければならないと考える。このWHOの基本理念を7つのキーワードとしてとらえ、研修を終えて学んだことを報告する。
*キーワード
1)治療に反応しなくなった患者
2)全人的なケア
3)症状コントロール
4)精神的苦痛のケア
5)社会的苦痛のケア
6)スピリチュアルペインのケア
7)家族への援助

治療に反応しなくなった患者をどうとらえていくか

 進行癌患者の心理的特徴をよくふまえ、患者が自分の病気に対してどう考えているのか把握していかなければならない。また、病気が発覚してからどんな経過をたどってきたのか、その心理的背景を理解しながら、どんな終末期の段階にあるか判断していかなければならない。患者それぞれが同じ過程をたどるわけではないが、キューブラー・ロスや柏木哲夫氏の死にゆく患者の心理的過程のモデルを参考にしながら、把握し、その人の人生において重要な状況であることを受け止めていきたいと考える。
 患者を一人の人間として把握していくには、看護者の人間理解への洞察力が問われていく。患者が何を大切に生きてきた人なのか、何に価値をおいて生きてきた人なのか、患者の人生の歴史について学び、受け入れていく姿勢を持つことが大切である。そして、患者、家族が今、何を希望されているのかということを、看護者の価値観で偏ることがないように、多角的に、総合的に判断し、患者の意思を尊重していくことが大切だと考える。
 また、患者を限りなく尊い生命を持つ一人の人間として尊厳が保たれるよう、一医療者として倫理原則にのっとって援助していきたい。

全人的にとらえた緩和ケア

 R.G.Twycrossのホスピスの家によると、チームワークは緩和ケアの中心にあり、要となっている。チームワークの大切さは施設の実習を通して改めて感じたが、緩和ケア病棟における目標を共通理解すること、チームの一人一人が自分の役割を知っていること、そして、チームがお互いを尊重し、認め合うことである。チームの目標を理解し、達成するには、各々が死生観を持って、死に直面する患者に向かい合い、わかり合って患者のニーズに応えていかなければならない。 チームアプローチにおける看護婦の役割としては、患者に最も身近にいる存在として、患者の痛み、不安など、また、患者、家族が何を望んでいるのか把握しやすい状況にあり、それをキャッチしたならば、看護チームとしての目標を共通認識し、他のチームにも情報提供し、患者を中心に同じ目標に向かって問題解決がなされるように、チームの調整役となることである。

 

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