講義でも学んだように、緩和ケアではとくにチームアプローチが重要で、患者さんを中心にチームが同じ目標に向かってケアに関わっていくことである。そして専門家の方達と同じ立場で協力しあうことも求められる。実際にカンファレンスで、薬剤師の方にある患者さんの褥創処置に使用している軟膏についての情報交換や、理学療法士の方に患者さんのADLについて情報を提供してもらったり、半身麻痺の患者さんのベッドサイドでベッドからポータブルトイレへの移動を看護婦2人で介助していると情報を伝えたら、一人の介助でも大丈夫ということで実践してもらって看護婦側も気付きがあったり、情報提供をして専門家の意見を聴いて患者さんに返していくことが本当に大事であると思った。また、今役立たなくても知識としてもつことで他の患者さんに返しいてくことができる場合もあるので情報交換は必要なことである。
看護婦は患者さんのそばにいる立場として、患者さんの苦痛・不安など、患者さんが、また家族の方が何を希望しているか情報をキャッチして、カンファレンスの場でチームに伝え目標を全員で共通認識し、専門家にも状況を理解してもらう。そこで看護としての目標を話し専門家の意見を聴いて、患者さん中心に同じ目標に向かって協力してチームアプローチすると患者さんのニードに応えていけるのでないかと実感した。
(2)ボランティアについて
現在約50名の市民ボランティアの人達が参加されている。大きく病棟・事業・園芸と3グループに分けられていて、コーディネーターはソーシャルワーカーの方が担当されていた。ホスピス病棟では食事や入浴の介助、買い物、選択、庭園の手入れ、ティーサービス、いろいろな催しやイベントの企画などの活動内容を聞いて、医療者だけでは満たされないニードにできるだけ応えようとする積極的な姿勢に感動した。
病棟にはボランティア連絡ノートがあり、看護婦とボランティアの人達との細かい部分のお知らせやお願い事、その日の出来事など自由に書き込まれ、亡くなられた患者さんの家族が残していったボランティアの人達への感謝の気持ちが記入されていた。ノートを読み返していると患者さんや家族、ボランティアの人達、看護婦さんの日常の関わりが密度の濃いものであることを感じた。
今回ボランティア勉強会に出席した時に一人のボランティアの人から、デイルームで患者さんといる時に患者さん同士の会話に入っていいものかと思い、飲み物を準備するだけになっているように感じていると言われて、他のボランティアの人はどうしてますか?と尋ねていた。その場の意見で飲み物を準備して場所の提供をすることも大切なことだけど、患者さんが自分の部屋から出てきてデイルームに来るのは何を求めて集まってくるんだろうか?と考えた時に、日常の生活の中でお茶を共にして語り合うことが自然に振るまえる時間を共有できれば、無理に会話に入らなくてもそばで聴くのもいいのではという意見がでていた。私もデイルームの雰囲気を見ていて患者さんにあわせて自然と話に入っていけるようになっている場面を見てそんなふうに感じたのと、ボランティアの人達の外からの刺激が患者さんにプラスになっている部分もあり、ボランティアのマンパワーは大きいものだと思った。
またソーシャルワーカーの方から、ボランティアの人達を集めたときの経過を聞いたときに、病院がどういう理念でボランティアを集めるか、基盤がしっかりできていないと、一般市民の人達を職員のように同じ扱いで強制して教育することはできないので、難しい点もあるという現状も知った。
(3)パストラルケアについて
パストラルケアは病む人、家族の話を聴き、その思いにとどまり、歩みを共にし、その人達の中に現実に直面する勇気をもつことを助ける関わりをすることが大事である。その前提として、スタッフが自分自身をよく見つめ、自分を知り、自己受容できていないと深い関わりがもてないので、自己受容を深めること、患者さんや家族の主観に対するコミュニケーション技術がパストラルケアには必要だと思った。
患者さんを通して自分自身の存在の弱さを気付かされ、無力感を感じたりすることもあるが、緩和ケアで特に患者さんの心の中にある死という主観の問題について自然な対応を求められるパストラルケアは、死の準備期間としての意義を大切にして、大きな役割を担っていると改めて感じた。
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