一人で様々なことを抱え込むことなく、スタッフのストレス緩和にもつながっているように感じられた。当院のチームアプローチがうまくいっているかどうか不安に思う背景には、こういう意識が薄かったり、各チームメンバーの緩和ケアでの経験不足からくる自信のなさもひとつの理由にあげられるのではないだろうか。今後、深めなければならない課題だと思う。
当院では、1年を振り返り業務の改善として検討すべきことがいくつかあがり、その中に、固定チームナーシングの導入と夜勤体制の見直しがある。東病院での固定チームナーシングとプライマリーナーシングの併用による看護方式はすでに安定したものであり、私のなかにある教育面やケアの質に関することなど、いくつかの不安を軽減することにつながった。院内教育だけに限らず、緩和ケアにおける教育プログラムがしっかりと組まれており、プライマリーナースとしても次第に自立していく方法がとられている。
病棟はA・Bの2チームに分けられ、プライマリーナースとサブ・プライマリーナースが入院から入退院をくり返した場合でも死亡まで受け持っており、夜勤も同じチームの看護婦がケアにあたっている。夜勤については実際に体験させていただき、いくつかの参考となる点があった。夜勤をさせていただくにあたり、事前に伺っていた巡室が1時間毎というのは、予想通り速いテンポに感じられ、深夜ではすぐに朝を迎えたような気がする。頻回の訪室でかえって安眠を妨げないだろうかという思いがあったが、実際にはそういった方で病状的に落ち着いている方のところは、時間をあけるなどの配慮がなされており、当院でも状況に応じて個別対応している点では同じだと感じた。また、1時間毎に回ることで患者の夜間の様子が詳細に把握できている印象を受けた。深夜をして朝の申し送りを聴いてみると、それまでの朝出てきて聴く簡素で物足りないものとは少し違った感じがした。実際に夜の出来事は詳細に申し継がれており、ポイントは十分に伝えられているように思った。その他の内容は、やはり普段の十分なディスカッションや情報交換が充実しているからこそ省略できるのだろうと、再確認することもできた。そして、夜間に集中しがちな雑用的業務がほとんどなく、日中などで対応している点でも、夜間もベッドサイドで十分な関わりを持つことができる配慮がなされていることを実感した。
東病院の特徴のひとつである登録制度については、はじめかなり高いハードルのように感じていた。しかし、それはともすれば緩和ケアがかけ込み霊的になってしまうことを防ぐ意味で、意識的にされているというお話を伺い納得することができた。そういった状況になると本来の緩和ケアの機能が発揮できなくなるということは、当院でも開院当初に経験し、随分と大変な思いをしたので理解できる。登録用紙を外来で直接手渡しすることで、実情がつかめなかったり思いが違ったりすることがないような流れにもなっている。
PCU外来の見学をさせていただいた時に、何度も制度についての説明が、カウンセラーや医師から繰り返しなされているのを見て、それを感じることができた。当初、院外よりも院内から“そんなに敷居を高くしてどうする”と反発されたそうだが、現場としては、本来の緩和ケアの機能や、スタッフの心身の疲労を考えて貫かれたようである。その結果、次第に現在の状況ができあがってきたようだ。PCU外来は登録の窓口であると同時に、在宅患者の経過観察と症状コントロールを行う役割もある。年々、軽快退院の患者数が増加している状況のなかで、在宅電話サービスなどの在宅ケアプログラムが様々な試行錯誤の結果、確立されてきている。
考 察
病院の機能やシステムが異なるため、いろいろな学びや経験を、すべてにおいて比較することはできないが、日々の業務の振り返りをすることができた。当院の実情に照らし合わせて参考にさせていただける点も多く、この実習での経験を是非今後に活かしていきたい。また、開棟時からのいろいろなご苦労を伺うにつれ、自分たちは何をしたいのか、どういう緩和ケアをめざしているのかをはっきりとさせ、それに向かって整えていくことが大切だということを実感するとともに深く考えさせられた。この1年、目の前のことをただ一生懸命にやってきただけの私にとって、そのことは大きな収穫であったと思う。自分自身は、まだまだ緩和ケアにおいて足もとを固めなければならない時だが、長い目で先を見ながら一歩ずつ歩んでいかなければならないと感じた。
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