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ホスピス病棟でのボランティアの存在は大きい。ボランティア間の連絡ノートも書かれている。日程はその人の都合によるのでその日により1人であったり、3人であることもある。病院からは昼食のみ提供される。

6)訪問看護との連携

 現在のところホスピスより退院されることがほとんどない状態である。退院された場合は、山形医師の外来でフォローされる。訪問看護はこの時点では行っておらず、ホスピスでの相談を受けるとのこと。しかし外泊は頻繁に行われている。実習中にもかなり状態の悪い患者さんであったが、本人・家族の強い希望で外出を希望され寝台車にのって、酸素・吸引の準備をして9時から16時の間外出した。患者さんはホスピスではつらく開眼すると眠らせてほしいと希望され、ほとんど眠っている状態であった。しかし自宅ではしっかり開眼し、帰院も嫌がるほどであったという。その患者さんはその夜中死亡されたが、きっと満足であったのではないかと思う。最後まで患者さんの希望をかなえようとする姿勢の必要性、重要性を強く感じるとともに、スタッフの態度にも感動した。

全体を通して

 ホスピスでは死について、あるいは葬儀のことが自然と語られていた。それが私にとってはとても驚きであり、新鮮でもあった。ある患者さんは苦しい呼吸で「このまま寝たままで楽に逝きたい。そんなむしのいいことむりかなあ」と言い、「家族には全て話した。もう眠っていたい」と言われた。それを医師に話すと、すぐ患者・家族と話をされ軽いセデーションをかけることになった。そこにいくまではいろいろな経過があったと思う。常に患者・家族の思いに沿っていくという基本理念があるように思う。またある患者さんは自分のお葬式のことを心配し、それを口に出して言うことができる。ホスピスにはそういう雰囲気があるのだと思った。いえ必要なのだと思う。それをスタッフそれぞれが支えているのではないか。必要な治療は積極的に行われ、無用な、患者さんに負担をかけるような治療は行わない。しかし患者さんが希望されれば免疫療法、民間療法など受け入れているとのこと。私の施設では最後まで点滴等行い、尿がでなければ利尿剤を投与し、そしてアルブミン製剤を投与し最後の最後まで徹底的に行われる医療行為に対しいまさらながらの疑問を感じる。結果、患者さんは分泌物も増え、全身の浮腫がひかないまま苦しんで亡くなっていかれる。
 山形医師は、「何もしない勇気も必要だ」と言われた。ホスピスで最後を迎えられた患者さんは、本当に綺麗で静かに枯れるように逝かれた。本当に自然な死であったと思う。最後に家族も感謝して帰られた。しかしここへ来るまで、ほとんどの患者さんはいままでかかっていた医療施設の不満を口にされた。「本当のことを話してもらえなかった」、「転移はないと言われた。あの時はっきり転移があると言われていたら僕は、化学療法はしなかった」等々不信感をもたれていた。そして「ここでは嘘はないからね」と笑いながら言われた。医療者である私たちは正面を向いて、決して眼をそらさずに患者さんに対応していくことの重要性を再認識した。ここでの実習は私の施設の問題点がより明確になった。
 来春の緩和ケア病棟開設に向け、努力を惜しまず問題点を一つ一つ解決できるようやっていきたい。
 最後に温かく迎え入れ、指導してくださったアドベンチスト病院のスタッフの方々に感謝します。

 

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