多くはない勤務者なのに、気持ちをゆったりと患者さんにかかわっていることも一因ではと思われる。
2)チーム医療
毎週月曜日に医師一看護婦・牧師・MSW・PTが参加し、カンファレンスがもたれている。看護婦が進行係をし、ホスピス入院患者・入院待ちの患者・問い合わせ患者について検討を行っている。その際はほとんど看護婦サイドから情報提供がなされている。疼痛コントロール、投薬等はその時の看護婦にかなりの部分まかされている。それは医師と看護婦の信頼関係におおいに寄与していると思われる。担当の山形医師は「ホスピスは看護婦さんでもっている」といわれ、その考えが全てを物語っているように思われる。同時に看護婦としての誇り、重い責任を担っていることを痛感する。牧師はほぼ毎日病室を訪れ、患者・家族の話に耳を傾ける。しかし患者さんの中には、訪室を拒否される方もおり看護婦の情報により訪問を見合わせることもある。常に他職種と情報交換されている。そこは大きい組織ではなく小さい組織のメリットと思われる。牧師さんは、患者さんとの関わりで注意していることとして、?患者さんは罪意識をもっている(気持ちが荒れている):どんな人でも受け入れるゆとりをもつ必要がある。?患者さんのニードに答えていく:自分たちが忙しくしていると患者のニードが見えない。訴えられるようにチャンスをつくっていく。?人間のもっている感情に敏感であること。?訪問を短く頻繁に(患者がリードしているときは長引く、こちらがリードしているときは短く)。?患者さんとの精神的距離を考える:弱者と強者の距離感。?患者さんの聴覚は最後まで残る。?わかりやすい言葉で話す。?がん患者さんが、がん患者の体験談を読むことは恐い:患者は自分の病状と比較しながら読んでしまいそこに恐さがでる(他にいろんな患者がいるから貴方も頑張りなさいというメッセージになってしまう)。?患者さんと共有できる言葉をもつこと:聖書を毎回読みながらその人と思い出をつくっていこうと思う。以上9点をあげられた。
また栄養士は、毎週1回患者さんを訪室し嗜好調査をする。かなり細かい部分まで調査され、できるだけ嗜好にあわせられるよう努力されている。病院食も菜食のため、肉・魚の食べたい人に関しては、家族あるいはスタッフにて病棟の調理室にて調理される。
3)病棟での問題点と対策
特に問題点等はきかれなかった。しかし勤務者が少なく(日勤者は看護助手を除き2〜3名)、かなりの負担は多いと思われるが、苛立った雰囲気はみられなかった。奉仕の精神か?信仰に寄与する部分もあるのかと思う。スタッフのストレスに関しては信仰の持っている人は、お祈りをしたり、そうではないスタッフは買物・友人との食事等で解消している。また勤務希望はできるだけ全てきくようにしているとのこと。月1回のスタッフの食事会を催す。牧師さんが常にいるためスタッフの心のケアもされているようである。やはりホスピスにおけるチャプレンの存在は、患者さんにとってもスタッフにとっても大きいと思われる。
4)夜勤体制
夕勤(準夜勤)は2名(看護助手がいる場合は1名)、深夜勤は1名で、その勤務帯で死亡あるいは急変等があった場合は、フローティングナースと呼ばれている人が救援に入る。入院患者さんが10名のなかでは夜間たいへん忙しいと思われる。夜間は投薬等で不眠の患者さんに対しては睡眠は確保されているが、あらゆることの対応はたいへんであろうと推察する。
実習中にも死に対する恐怖のため、多量の眠剤を服用しているにもかかわらず不眠を訴える患者さんがいた。やはり夜間のコールが多くひとりでの対応はたいへんであろうと思われる。
しかし、何かあればフローティングナースがすぐ対応できる体制になっているようである。
*フローティングナース:夜間フリーのナースが勤務しており(ほとんど忙しい外科病棟に勤務)連絡するとその場所に手伝いにいくシステム。婦長あるいは婦長補佐がなっている。
5)ボランティア
ボランティアは一般公募。ほとんどの人が、ボランティア講座を聴講しその結果応募されている。ある人は自分の母親が、アドベンチストのホスピスで死亡しその後ボランティアになられた方もいる。応募があると教育婦長が面接し決定する。
前ページ 目次へ 次ページ