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何も話さずに側に居ることの難しさ

花園病院
松本さおり

 今回、私が実習させていただいた施設は、社会保険神戸中央病院である。
研修の動機としては、実際に行われている緩和ケアの内容を知り、今後に役立てたいということであった。
目的としては、緩和ケアを通して自己の知識・技術・態度を学び、一般病棟においても活用できることである。
実習の目標は、
?実習施設の理念・目的を理解し緩和ケア病棟としてどのような社会的役割を果たしているか学ぶ。
? 緩和ケア病棟におけるチームアプローチ・看護婦の役割を学ぶ。
?受け持ち患者の苦痛をひとつでも理解することができる。
?家族の一員(夫)を失う悲しみ(家族の苦痛)を少しでも理解することができる。
?一般病棟において治療する立場の医療者側と緩和的ケアを求める患者・家族の間に立つ看護婦としての対応・考え方・ケア上の問題を解決する方法を学ぶ、ということである。
 以上のことを念頭において、研修させていただいた。
 まず、目標の?、実習施設の理念・目的を理解し緩和ケア病棟としてどのような社会的役割を果たしているかを学ぶ、ということであるが、社会保険神戸中央病院は、神戸市北区の中核病院として活動されている。地域住民の健康を守ること(健康管理センターがあり、疾患の予防と早期発見に努めている)や、高齢化社会に対応するため老人保健施設が併設されている。その中で、緩和ケア病棟があり、治癒をめざした積極的な治療が有効でなくなった患者の身体的苦痛・精神的苦痛の緩和を希望される方への医療ケアとして位置づけられていた。患者はほとんど神戸市内の方で、緩和ケア病棟としても活動が盛んなところであることを学ぶことができた。
 目標の?チームアプローチ・看護婦の役割を学ぶということであるが、総合病院として他科との連携がスムーズで、精神科の医師が非常勤としてではあるがサポートされていること。医療ソーシャルワーカーの存在で社会的苦痛の緩和も図られているようであった。宗教家の存在がないため、霊的苦痛に対しては、看護婦の役割の一つだったように思えた。また、ボランティアさんもいなかったため、毎月のレクリエーションなども看護婦に委ねられていた。その他、看護婦の役割として、患者さんがどんな苦痛(全人的苦痛)でいるか見極めること、その苦痛を他の専門家にコンタクトをとることも大切だし、その苦痛に対し、適切なケアの提供と看護婦自身の知識や技術の向上も看護婦の役割のひとつだと思った。
 その他の目標に関しては、受け持ち患者を通して述べたいと思う。
今回、10日間の実習のうち、他病棟から転科されてきた患者を、受け持ちナースとともに9日間看させていただいた(うち、実習初日はオリエンテーション)。

〈患者紹介〉
 S・M氏 57歳の男性。現病歴は、平成6年12月に胃癌と下行結腸癌にてオペされ、胃全摘と脾摘、胆摘、左半結腸切除術を受けている。
肝メタもあり、肝メタに対してはリザーバーを施行して、CT上、肝メタは消失し外来followされていた。
平成9年2月にも再び肝メタが増大され、肝切除されているが、11月には、再び肝メタの増大が見られていた。
平成10年8月頃より、腹部の痛みと全身倦怠感も強く、食欲低下が見られる。
9月頃より、下肢の浮腫が増大され、10月15日、黄疸と嘔気、全身倦怠感、腹部の痛みの増強のため、主治医の勧めで入院(外科病棟)となった。

 

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