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(3)看護婦の役割
 病棟の中で患者さんや家族に一番身近であり、い ろんな場面に接する機会が多く患者さんの状態が一番わかるのが看護婦である。情報の収集と提供、患者さんと家族のケアや教育や指導、医療チームとボランティア、コメディカルスタッフ等とのコーディネート等役割はたくさんある。しかし一番大切なのは、看護の専門的知識と技術を持った“患者さんの良き理解者”であることではないだろうか。

2)ホスピスケアの問題点や自分の課題を解決するための対応や考え方
(1)ホスピスケアの問題点及び対策について
・人員不足
 21床に対して看護婦は20名(婦長さん含む)。日勤のスタッフは5〜6名。リーダー1名は受け持ちされてなかったので、スタッフ1名につき4〜6人の患者を受け持つことになる。ホスピスケアを行うためにはたっぷりとした時間が必要なことがわかったので、これでは時間が足りないと思われた。限られた人数で患者さんを犠牲にしないホスピスケアを行うにはどうしたらよいのか? 自分の施設においても大きな課題であり、工夫していきたい。

・看識力の格差
 経験年数、教育課程、個人の価値観等によって、知識や技術の格差が生まれる。特にホスピスケアにおいてはプライマリーナースと患者及び家族の関係が緊密なために、看護力が問われる。このことを解決するためにプライマリーは2人にし、看護力の均等化がはかられていた。また、カンファレンスを数多く持ちスタッフ全員で考えることにより、チームとして責任を分け持ちケアしていく形で支援されていた。各自の看護力の向上のためには、各種勉強会や研修が行われていた。自施設においても参考にして行っていきたい。

・人間的成長の問題
 人間的成長のために、キリスト教に基づいて毎朝の礼拝や申し送りの前のお祈り等が日常的に行われていた。宗教という基盤があるので、理念の浸透及び人間教育がわかりやすく効果的に行われていた。その点、自己の施設は宗教の基盤がないので難しいと思う。ケアに必要不可欠な個々の人間的成長を、どうやって支援していくか検討していきたい。

・日本の医療の中の不平等
 ホスピスケアを求めている人はたくさんいるのに、それに対応するだけの施設数がないことがよくわかった。ホスピスへの入院希望者は、まず電話相談でふるいにかけられる。電話相談員の方のお話によると、相談されてくる方の3分の2が適応外と判断される。判断は、ホスピスについての誤った理解、告知されていない、ホスピス入院についての意志統一ができていない等の理由による。相談は週2回で、一日に多い時は10人、少なくとも2〜3人の相談がある。ふるいに落とされた方でも、切迫しており非常に心苦しいケースもあり、現在の医療の矛盾を感じられるということだった。電話相談で初診外来の予約をし、外来受診後に入院を申し込んでも、ベッドがないために待たなくてはいけない。実習中も入院待ちの患者さんが10人前後おられた。終末期の患者さんだけに、待たれている間に亡くなってしまわれることもあるという。限定された施設だけでなく他の病院でも、もっとホスピスケアの精神、技術が浸透し、実施されなくてはいけないと痛感した。ホスピスを知っている患者さんだけ、入院できた方だけが尊厳ある“生”を全うできるという不平等が改善されなくてはいけないと強く思う。

(2)自分の課題及び対策について
・終末期の患者さんにどのような立場で関わるか
価値観、死生観、個人の権利、人格の尊重をする。傾聴する、共感する、謙虚になる、倫理的に考えを持つ。いろいろなことを学んだ。それらはすべて人間としてあたりまえのことであり、普段は忘れがちなことである。これらのことは、どんな時にも誰に対しても忘れないようにしなくてはいけない。その上で、“患者さんや家族を同じ人間として尊重でき、専門職者としての看護が提供できる看護婦”という立場で関わっていこうと思う。
・自分を見失わないためのコーピング方法
 自分を向上させる努力を続ける。人間とは、生きるとは、存在とは……人間の永遠のテーマである“生と死”。自分の内面を見つめ向上させていかなくはいけない。

 

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