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 患者に対しては家族とのお別れが終わった時点でセディション(患者・家族希望)を行い苦痛の緩和をはかる。また、最後の最後まで尊厳を持って接し、臨終の直前に患者の好みの飲み物を口に少し湿らせてあげたりと、みんなで見守りながら死を迎えた。その場に来れるスタッフはできるだけ集まり、最後のお別れをした。その後のエンゼルケアは家族と患者の思いで話をしながら、家族にも希望あれば参加して顔を拭くなどしてもらった。そのあとは看護婦のみでケアは行ったのだが、非常に丁寧なケアと感じた。たとえば、清拭するお湯に入浴剤を使用したり、陰部洗浄も行い口腔内も清拭し、化粧も丹念に行い着物を着せた後はまるで眠っているかのように見えた。花束を添えた、その姿を見た家族はとても感激していた。一般病棟ではエンゼルケアは処置的になってしまいがちである。消毒液で清拭し終わるとすぐに送り出す場合が多い。緩和病棟では死後も患者に生きている時と同様に接していると思う。家族も患者を大切にしてもらうことで満足感を得ることができるし、今後の家族ケアにも良い影響をおよぼすことに繋がると考える。
 遺族ケアについては実際はかかわれなかったのではあるが、主治医または婦長、プライマリーナースが可能ならば通夜または葬儀に出席しているそうである。病棟からは必ず弔電を打っているとのことであった。また、亡くなって2ヵ月目、1年目にカードを送っているし、年1回遺族会を開き茶話会を行っているそうである。

ボランティア活動

 現在、40名の登録あり、1名は一年契約(『JYVA』日本青年ボランティア協会 有料)でほかの方は週1回必ず曜日を決めて参加義務として無償のボランティアである。3ヵ月の研修期間後正式登録になっており、ボランティア・コーディネーターにより管理されている。きちんとした病院ボランティアの教育を実施している。ボランティアは素人の集団であることを忘れてはいけない。適応性についても面談し決定している。例えば、面談時何を目的としてボランティアに来たか明らかにしている。本当にボランティアがしたいのか、病院実習もしくは卒論のための調査、見学でないのかなど面談時自分の本当の目的に気づく人もいるそうである。また、病院ボランティアは特殊であり、協調性・秘密保持・患者への対応が考えてできる人を厳選している。ボランティアの管理・教育の不手際によって病棟の機能に悪影響を及ぼすため、慎重に考えねばならないとのことであった。六甲病院ではボランティアの活動は非常にうまく機能している。
 活動内容は食事の配下膳、植物の管理、生け花の管理、午後のお茶、お菓子づくり、患者の買い物、患者の洗濯、イベントの手伝いなどである。 病棟は色とりどりの花や緑で飾られ、いたるところにボランティアの工夫が感じられる。
 私達もいろいろのイベントに参加させてもらったが、病院にいながらにして、イベントに参加できる楽しみ、草花を見る楽しみ、お茶やお菓子を食べる楽しみなどが味わえる。この緩和病棟が家庭の雰囲気をもっているのはボランティアの活動もおおいに影響していると思う。社会の風(病院外とのつながり)を運んでくれるボランティアがいることにより、医療従事者だけでは満たすことのできない患者のニーズを満たしていると感じた。

 

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