緩和病棟ハード面について
設計時点より使用するスタッフの意見を取り上げている。病棟完成1ヵ月前より壁のクロスからはじまり、床のカーペット、カーテン、手すり、風呂、すべての備品にいたるまでスタッフが考え希望したものを取り入れ、準備した。
たとえば、多目的ホールはいろいろな形をとれるようなテーブル、色にもこだわりを持ち、椅子の色もいろいろな色にして患者の好みの椅子に座れるよう考えている。また、テーブルも車椅子にちょうどいい高さのもので福祉のさかんなヨーロッパのほうからの購入とのこと。また、デイルームは開放感のある大きな窓から大阪湾が望める。くつろげるソファーや観葉植物・熱帯魚の水槽もあり、外に出れない患者は家族とこの場所で記念撮影も行っているそうである。すべての部屋の壁は優しいもようがあり、病室はカーテンも花柄で洗面台もすてきで、ホテルの一室を思わせるような感じである。入院患者のほとんどの方が病院と思えないと感嘆するそうである。また、単に美しいだけでなく機能性も重視し、さらに病棟が一つの大家族のような家庭的雰囲気も出せるような作りとなっており、自分の施設開設時の良い参考となった。家族風呂が24時間使用可は患者・家族にとってありがたいものだと感じた。
チームアプローチ
緩和ケア病棟では、患者の残された人生の質を高めるために、それらの基本的ニーズ(身体的・精神的・社会的及び宗教的)を満たしていくことが、大切である。しかし、すべてのニーズを医師と看護婦だけで満たすことは困難である。そのため他職種の人々とともに専門分野を生かしてチームを組み、患者のニーズを満たしていくことが重要となる。そのためにも、フラットな立場でのチームアプローチの徹底が必要である。ここ六甲病院では医師と看護婦、チャプレンさん、ボランティアなどの関係がとても良く、良いチームアプローチが取れていると感じた。
チームの情報交換の場である朝の申し送り・カンファレンスには毎日看護婦、医師、チャプレンが参加している。毎金曜日には精神科の医師の参加もある。ボランティアの申し送りも毎日行われていた。
また、チームアプローチの要となるのは看護婦であるので、チームの情報交換の場であるカンファレンスも看護婦中心に毎日行っていた。カンファレンスを円滑に行うこつとして、?患者のバックグラウンドを表面に出し、?症状ばかりを取り上げない?日常的な言葉で全体のイメージを掴むようにしていく?問題として取り上げる患者のプライマリーナースが司会・進行をするとやりやすい?あまりかたくならずたまにはジョークも時に必要とのことであった。医師と看護婦のくいちがいも時としてある。そんな時、相手を非難ばかりせず、お互いに助けられ上手になることによりチームワークがうまくいくなどのことを学ばせてもらった。
一般病院では医師と看護婦の関係が縦型であり、まずこれをいかにフラットな立場にするかが大きな課題であると感じている。
トータルケア
ターミナルケアにおいては、末期患者がその人らしく生を全うできるように援助することであり、患者・家族のQOLをできるだけ高めることである。身体症状及び精神症状にたいして十分なコントロールとケアをすることにより、その人らしさを取り戻すことができる。そのためには、患者のニードの把握が重要となる。
ターミナル期の患者の全身状態は進行性で変化しやすく、症状が増悪したり、新しい症状が現れることがしばしばである。そのため、看護婦は患者をよく観察し、患者の訴えに真剣に耳を傾けることが重要となる。毎日の申し送りを聞かしてもらっているとそのことがよくわかる。一般病棟の場合、申し送りは簡潔にエピソードは抜きで申し送る傾向にある。しかし、緩和病棟では患者の表情・態度・言動・日常生活の変化を知ることによって患者の訴えだけでない症状を知る手掛かりになることが多いため、エピソードが重要になることもあると感じた。また、使用している薬剤の効果・副作用についてのアセスメントも日々繰り返し評価しているし、今の患者にはなにが必要かの検討も申し送りの情報をもとに微調整していたと考える。
前ページ 目次へ 次ページ